選択乗車区間内からの区間変更

新幹線経由の乗車券と、並行在来線経由の乗車券は一般に同じものとして扱われます。
規則上の根拠としては東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第16条の2第1項で、同じ路線として扱う新幹線と並行在来線を定めています。この規定により新幹線経由の乗車券で変更することなく並行在来線を利用できますし、逆も同様です。


一方で、新幹線経由と在来線経由で扱いが異なる場合もあります。

今回は名古屋市内から東京都区内への新幹線経由、在来線経由それぞれの片道乗車券により新幹線に乗車、新横浜から先を横浜線中央本線経由で立川までに変更するケースを考えます。

原券は新幹線経由・在来線経由とも大都市近郊区間内相互発着でなく、片道100kmを超えています。東京都区内への乗車券を方向が異なる立川に変更しましたので、規則第249条第1項第2号の変更となります。従って同条第2項第1号のイの(ロ)に規定されている不乗区間と変更区間の運賃の差額(不乗区間の方が高い場合は返金しない)による変更となります。

品川・小田原間は規則第157条第1項第20号の規定により東海道本線東海道新幹線の選択乗車が認められています。選択乗車区間内である新横浜を起点として区間変更を行う場合の取扱いは規則第250条第1項第2号に規定されています。
変更の起点が運賃計算経路に含まれる場合はその駅を起点とし、運賃計算経路に含まれない場合は選択乗車区間の開始駅が起点となります。
すなわち新横浜から横浜線を利用する場合、新幹線経由の場合は運賃計算経路が新横浜を経由していますので「新横浜」が変更の起点、在来線経由の場合は運賃計算経路に新横浜が含まれませんので選択乗車の開始駅である「小田原」が変更の起点となります。


新幹線経由の乗車券から変更したケースの車内補充券です。
原券「名古屋市内→東京都区内、経由:名古屋・新幹線」、収受・変更区間「新横浜→立川、経由:横浜線中央東線」とあります。
前述のとおり変更の起点は新横浜ですので不乗区間は「新横浜→東京」で28.8km 500円、変更区間は「新横浜→立川」で46.4km 800円ですので収受額は差額の300円です。


在来線経由の乗車券から変更したケースの車内補充券です。
原券「名古屋市内→東京都区内、経由:東海道線」、収受・変更区間「小田原→立川、経由:小田原・新幹線・新横浜・横浜線中央東線」とあります。
在来線経由の場合の変更の起点は小田原ですので、不乗区間「小田原→東京」83.9km 1490円、変更区間「小田原→立川」101.5km 1940円で収受額は差額450円です。



このように、原券によって区間変更の収受額が異なる結果となりました。
区間変更で不乗区間と変更区間の差額となるような区間変更券の発行はマルスシステムが対応していないため、駅で変更する場合は改札補充券による発券、または最終下車駅での精算となります。
車内補充券発行機では区間を入力することで自動的に計算されますので、このような変更は車内で行ったほうが良いかもしれません。

支払った総額は原券が新幹線の場合は6260+300=6560円、在来線の場合は6260+450=6710円となります。
なお、名古屋市内→立川(経由:名古屋・新幹線・新横浜・横浜線・中央東)の乗車券を初めから購入していた場合は6480円です。初めから全区間を購入しておいたほうが安価ということになります。

(東海道本線(新幹線)、山陽本線(新幹線)、東北本線(新幹線)、高崎線(新幹線)、上越線(新幹線)、信越本線(新幹線)及び鹿児島本線(新幹線)に対する取扱い)
第16条の2 次の各号の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区とは、同一の線路としての取扱いをする。
(1)東海道本線山陽本線中神戸・新下関間/東海道本線(新幹線)及び山陽本線(新幹線)中新神戸新下関
(以下略)


(選択乗車)
第157条 旅客は、次の各号に掲げる各駅相互間(略図中の〓線区間以遠の駅と━線区間以遠の駅若しくは◎印駅相互間)を、普通乗車券又は普通回数乗車券(いずれも併用となるものを含む。)によつて旅行する場合は、その所持する乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、各号の末尾に記載した同一かつこ内の区間又は経路のいずれか一方を選択して乗車することができる。ただし、2枚以上の普通乗車券又は普通回数乗車券を併用して使用する場合は、他方の経路の乗車中においては途中下車をすることができない。
(1)〜(19)略
(20)品川以遠(田町、大崎又は西大井方面)の各駅と、小田原以遠(早川方面)の各駅との相互間 (品川・横浜間、品川・新横浜間)(小田原・横浜間、小田原・新横浜間)
(以下略)


(区間変更)
第249条 普通乗車券、自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券を所持する旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、当該乗車券類に表示された着駅、営業キロ又は経路について、次の各号に定める変更(この変更を「区間変更」という。)をすることができる。
(1)着駅又は営業キロを、当該着駅を超えた駅又は当該営業キロを超えた営業キロへの変更
(2)着駅を、当該着駅と異なる方向の駅への変更
(3)経路を、当該経路と異なる経路への変更
2 区間変更の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1)普通乗車券
イ 次により取り扱う。この場合、原乗車券が割引普通乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)であつて、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、変更区間及び不乗区間に対する旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によつて計算する。
(イ)前項第1号に規定する場合は、変更区間に対する普通旅客運賃を収受する。
(ロ)前項第2号及び第3号に規定する場合は、変更区間(変更区間が2区間以上ある場合で、その変更区間の間に原乗車券の区間があるときは、これを変更区間とみなす。以下同じ。)に対する普通旅客運賃と、原乗車券の不乗区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。
(以下略)


(特定区間等の途中駅が変更の開始又は終了となる区間変更の場合の旅客運賃の計算方)
第250条 第69条に規定する特定区間又は第157条に規定する選択乗車区間の適用のある普通乗車券を所持する旅客が、旅行開始後に、当該特定区間又は選択乗車区間の途中駅が変更の開始又は終了となる区間変更をする場合は、旅客運賃計算の変更開始駅又は変更終了駅を次の各号に定める駅として旅客運賃の計算をする。
(1)第69条の特定区間内の場合は、特定区間内の分岐となる駅とする。
(2)第157条の選択乗車区間内の場合は、旅客運賃計算経路の駅が変更の開始又は終了となる場合はその駅とし、旅客運賃計算経路でない一方の経路の駅が変更の開始又は終了となる場合は、その選択乗車区間が開始又は終了となる駅とする。
(以下略)