経路特定区間内での区間変更

米原から大曽根への区間変更券です。JR東海 米原駅の改札補充券で発券されました。


変更前の原券は大阪→敦賀です。

経由は「東海道・新大阪・新幹線・米原・北陸」とあります。
大阪(東海道本線)新大阪(東海道新幹線)米原(北陸本線)敦賀営業キロ156.4kmで運賃2590円なのですが、山科・近江塩津間は、東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第69条に規定される経路特定区間です。
運賃・料金は短い経路である湖西線経由で計算され、大阪(東海道本線)山科(湖西線)近江塩津(北陸本線)敦賀の136.9kmに対する運賃2270円となります。規則第158条により乗車券については運賃計算に用いなかった方の経路の迂回乗車も可能です。

原券が大都市近郊区間内相互発着ではなく片道100kmを超えているため、この乗車券を使用開始後に変更する場合は規則第249条第2項第1号のイに定められた区間変更が適用され、不乗区間と変更区間の差額が収受額となります。
規則第250条第1号の規定により、経路特定区間が適用されている乗車券において、特定区間内を起点とする区間変更の場合はその分岐駅が運賃計算の起点となります。

すなわち、不乗区間米原敦賀45.9km 840円(経由:北陸本線)、変更区間米原大曽根89.7km 1490円(経由:東海道本線中央本線)の差額である650円が変更額となります。原券2270円と合わせて2920円が今回支払った総額です。


ところで、初めから大阪→大曽根(券面は[阪]大阪市内→大曽根)の乗車券を通しで購入した場合、営業キロ200.2kmで運賃3670円です。通しの運賃よりも750円も安くなっています。
使用開始後の乗車券を区間変更することにより、通しで購入するより運賃が安価となるケースはままありますが(高くなるケースもあります)、大抵の場合は安くなったとしても1段階安い運賃にしかならない場合がほとんです。しかしながら今回の区間変更は結果として700円以上の差が発生しています。
このようなケースは経路特定区間の迂回経路に分岐する駅がある場合に発生し、運賃計算経路と迂回経路の営業キロの差が大きい場合に顕著となります。

規則第69条には9つの経路特定区間が定められていますので、1つずつ見てみます。
(1)大沼・森間 分岐駅なし
(2)赤羽・大宮間 営業キロの差が0.9km、迂回経路に分岐駅あり
(3)日暮里・赤羽間 迂回経路に分岐駅なし
(4)品川・鶴見間 営業キロの差が2.9km、迂回経路に分岐駅あり
(5)東京・蘇我間 営業キロに差なし
(6)山科・近江塩津間 営業キロの差が19.5km、迂回経路に分岐駅あり
(7)大阪・天王寺間 営業キロの差が0.3km、迂回経路に分岐駅あり
(8)三原・海田市間 分岐駅なし
(9)岩国・櫛ケ浜間 迂回経路に分岐駅なし

上記から(2)(4)(6)(7)で同様のケースが起こり得ますが、山科・近江塩津間は営業キロの差が大きく、最も通し運賃との差が大きくなりやすいケースであると言えます。


このような運賃の差が発生するのは、原券の運賃計算を短い湖西線経由で行っておきながら区間変更の運賃計算は遠回りの経路の途中駅を起点としているためです。
選択乗車中の区間変更は、規則第250条第2号により運賃計算経路でない経路の場合は選択乗車区間の開始・終了駅を運賃計算の起点・終点とすると定められています。経路特定区間についても同じ考え方でいいように思うのですが、規定上は経路特定区間と選択乗車区間の途中での区間変更を明確に分けて扱っています。

推測ですが、これは「旅客の意志が原券の経路に反映されているかどうか」に依っているものと思われます。
選択乗車は効力に関する規定で、発売時は旅客がどちらの経路でも指定できます。したがって経路は旅客の意志を反映していることから、選択乗車区間内での変更時は運賃計算経路に使用した経路を基準にしていると考えられます。
一方で経路特定区間は運賃・料金計算に関する規定で、強制的に短い経路で計算されることから旅客の意志が入り込む余地はありません。このため迂回乗車中の変更は、分岐する駅を起点・終点にしているのではないでしょうか。あくまで推測ですが。

(特定区間における旅客運賃・料金計算の営業キロ又は運賃計算キロ)
第69条 第67条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる区間の普通旅客運賃・料金は、その旅客運賃・料金計算経路が当該各号末尾のかつこ内の両線路にまたがる場合を除いて、○印の経路の営業キロ(第9号については運賃計算キロ。ただし、岩国・櫛ヶ浜間相互発着の場合にあつては営業キロ)によつて計算する。この場合、各号の区間内については、経路の指定を行わない。
(1)〜(5)略
(6)山科以遠(京都方面)の各駅と、近江塩津以遠(新疋田方面)の各駅との相互間
 東海道本線北陸本線
湖西線
(以下略)


(特定区間におけるう回乗車)
第158条 第69条の規定により発売した乗車券を所持する旅客は、同条第1項各号の規定の末尾に記載されたかつこ内の○印のない経路をう回して乗車することができる。
2 第69条第1項各号の区間内において2枚以上の普通乗車券を併用して乗車する旅客は、その券面に表示された経路にかかわらず、同号かつこ内の他方の経路を乗車すること ができる。ただし、他方の経路の乗車中においては、途中下車をすることができない。


(区間変更)
第249条 普通乗車券、自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券を所持する旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、当該乗車券類に表示された着駅、営業キロ又は経路について、次の各号に定める変更(この変更を「区間変更」という。)をすることができる。
(1)着駅又は営業キロを、当該着駅を超えた駅又は当該営業キロを超えた営業キロへの変更
(2)着駅を、当該着駅と異なる方向の駅への変更
(3)経路を、当該経路と異なる経路への変更
2 区間変更の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1)普通乗車券
イ 次により取り扱う。この場合、原乗車券が割引普通乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)であつて、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、変更区間及び不乗区間に対する旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によつて計算する。
(イ)前項第1号に規定する場合は、変更区間に対する普通旅客運賃を収受する。
(ロ)前項第2号及び第3号に規定する場合は、変更区間(変更区間が2区間以上ある場合で、その変更区間の間に原乗車券の区間があるときは、これを変更区間とみなす。以下同じ。)に対する普通旅客運賃と、原乗車券の不乗区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。
(以下略)


(特定区間等の途中駅が変更の開始又は終了となる区間変更の場合の旅客運賃の計算方)
第250条 第69条に規定する特定区間又は第157条に規定する選択乗車区間の適用のある普通乗車券を所持する旅客が、旅行開始後に、当該特定区間又は選択乗車区間の途中駅が変更の開始又は終了となる区間変更をする場合は、旅客運賃計算の変更開始駅又は変更終了駅を次の各号に定める駅として旅客運賃の計算をする。
(1)第69条の特定区間内の場合は、特定区間内の分岐となる駅とする。
(2)第157条の選択乗車区間内の場合は、旅客運賃計算経路の駅が変更の開始又は終了となる場合はその駅とし、旅客運賃計算経路でない一方の経路の駅が変更の開始又は終了となる場合は、その選択乗車区間が開始又は終了となる駅とする。
(以下略)