買替えと区間変更

浜川崎から東日本会社線550円区間の片道乗車券と、西立川から東日本会社線140円区間の片道乗車券です。


浜川崎駅は自動券売機のみ設置の終日無人駅です。
西立川駅は係員配置の改札窓口はありますが、みどりの窓口指定席券売機はありません。
どちらの駅も自動券売機で発売しているものしか購入できないという意味では同じですが、券面をよく見ると「○ム」の有無で差があります。

「○ム」は東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程(以下、基準規程)第44条第1項に定めがあり、東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第27条に規定される「旅客の希望する乗車券を発売できない場合」に表示されることになっています。
本来は旅客の希望する着駅までの乗車券を発売するのですが、車内や駅の設備の都合によりそれが発売できない場合、その設備で発売できる最遠または乗り継ぎ駅までのものを発売し、途中駅等で最終的な着駅までのものを改めて発売することになっています。これは「買替え」といい、旅客都合による区間変更とは区別されています。
規定上は旅客の希望する乗車券を発売できない場合に「○ム」を表示することになっていますが、実際は区間によらず一律で表示されます。

とはいえ、実際の扱いとして「買替え」と「区間変更」が厳密に区別されることはなく、「区間変更」として処理されるケースが殆どでしょう。マルスシステムが「区間変更※」を扱えても「買替え」を扱えないというのも一つの原因と思います。「買替え」と「区間変更」の差については過去の記事でご紹介しましたので、ここでは省略します。
規則第249条第2項第1号ロに規定される区間変更、即ち実際乗車区間の運賃と原券の差額となる場合に限られます。



浜川崎から甲府への[買替]です。
浜川崎→東日本会社線550円区間の乗車券を車内で申し出て浜川崎→甲府に買替えました。
浜川崎→甲府の片道134.5kmに対する運賃2270円と原券550円の差額の1720円が領収額です。



西立川から竜王への片道乗車券[区変]です。
西立川→東日本会社線140円区間の乗車券を使用開始後に西立川→竜王へ変更しました。
原券が片道100km以下の乗車券ですので、乗車区間である西立川→竜王の片道103.0kmに対する運賃1940円と原券140円の差額の1800円が領収額です。



自動券売機では浜川崎駅は550円区間まで、西立川駅は1660円区間までの乗車券しか発売していません。
本来であればどちらも「○ム」の表示をして「買替え」で扱われるのですが、西立川駅で発売する乗車券はどの区間であっても「○ム」はありません。
「買替え」は「○ム」の表示のある乗車券に対する扱いですので、浜川崎駅の乗車券は「買替え」、西立川駅の乗車券は「区間変更」として扱われることになります。実際はどちらの駅の乗車券も「区間変更」として処理されるケースが殆どでしょう。



なお、「買替え」の規定は東日本旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則、同 旅客連絡運輸取扱基準規程において規則・基準規程を準用するとは定められていません。従って連絡乗車券については券売機で発売していない区間のものであっても「買替え」では扱われず、「区間変更」として処理するのが正しい扱いということになります。

浜川崎から八丁畷京急線140円区間の片道の連絡乗車券です。乗継割引が適用されています。

浜川崎駅で購入したJR線完結の乗車券では「○ム」が表示されていましたが、京急線連絡乗車券の場合は「○ム」の印字がありません。

【旅客営業規則】
(普通乗車券の特殊発売)
第27条 旅客が列車内において普通乗車券の発売を請求する場合、当該列車の係員が携帯する普通乗車券ではその請求に応じられないときは、普通旅客運賃(旅客が旅客運賃割引証を所持する場合又は旅客の請求する区間について旅客運賃割引の取扱いができる場合であつても、無割引の普通旅客運賃)を収受して、係員がその携帯する普通乗車券によつて乗車方向の最遠の駅又は乗継駅までのものを発売し、同乗車券の券面に、途中駅まで発売した旨を表示する。
2 前項の規定は、第21条の2の規定により乗車券の発売区間に制限のある駅において、その発売区間外の普通乗車券の発売の請求があつた場合に準用する。
3 前各項の規定によつて発売した乗車券を所持する旅客に対しては、前途の駅又は車内において、これと引換に旅客の請求する区間の普通乗車券を発売する。この場合、既に収受した旅客運賃と旅客の請求する区間の普通旅客運賃(旅客が旅客運賃割引証を提出した場合又は旅客の請求する区間について旅客運賃割引の取扱いができる場合は、割引の普通旅客運賃)とを比較して不足額を収受し、過剰額は駅(取扱箇所が車内の場合にあつては前途の駅)において払いもどしをする。

(区間変更)
第249条 普通乗車券、自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券を所持する旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、当該乗車券類に表示された着駅、営業キロ又は経路について、次の各号に定める変更(この変更を「区間変更」という。)をすることができる。
(1)着駅又は営業キロを、当該着駅を超えた駅又は当該営業キロを超えた営業キロへの変更
(2)着駅を、当該着駅と異なる方向の駅への変更
(3)経路を、当該経路と異なる経路への変更
2 区間変更の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1)普通乗車券
 イ 次により取り扱う。この場合、原乗車券が割引普通乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)であつて、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、変更区間及び不乗区間に対する旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によつて計算する。
  (イ)前項第1号に規定する場合は、変更区間に対する普通旅客運賃を収受する。
  (ロ)前項第2号及び第3号に規定する場合は、変更区間(変更区間が2区間以上ある場合で、その変更区間の間に原乗車券の区間があるときは、これを変更区間とみなす。以下同じ。)に対する普通旅客運賃と、原乗車券の不乗区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。
 ロ イの場合において、原乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)が次のいずれかに該当するときは、原乗車券の区間に対するすでに収受した旅客運賃と、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。この場合、原乗車券が割引普通乗車券であつて、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によつて計算する。
  (イ)大都市近郊区間内にある駅相互発着の乗車券で、同区間内の駅に区間変更の取扱いをするとき。
  (ロ)片道の乗車区間営業キロが100キロメートル以内の普通乗車券で区間変更の取扱いをするとき。
(以下略)


【旅客営業取扱基準規程】
(普通乗車券の特殊発売方)
第44条 規則第27条第1項又は同条第2項の規定により普通乗車券を発売する場合は、その乗車券の表面に「○ム※」の表示をして発売するものとする。この場合、前途の駅又は車内においてその乗車券と引換えに旅客の請求する全区間の乗車券を発売する(以下これを「買替え」という。) 旨を案内しなければならない。
(以下略)
※原文では○印の中にカタカナの「ム」です。