座席未指定の特急券

2015年3月14日のダイヤ改正以降、座席未指定の特急券というものが発売されるようになりました。規則上の呼称は「未指定特急券」です(※1)。
通常の指定券と同じく1ヶ月前からの発売ですので実際に今年の2月に購入してみました。
※1 東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第3条第9号の2

立川から八王子の成田エクスプレスの乗車券・未指定特急券です。指定席特急券と同じく運賃加算により乗車券と合わせて1葉で発券できます。


対象となる列車は規則別表第1号の2で、ひたち号・ときわ号、スワローあかぎ号、成田エクスプレス号の3群4列車(および、別に定める列車)が指定されています。これらの列車については未指定特急券の発売額は指定席特急料金と同額(※2)となっています。ひたち号・ときわ号、スワローあかぎ号については普通列車グリーン券と同様に事前料金・車内料金が設定され、繁忙期・閑散期によらず通年同額とも定められています(※3)。
※2 規則第125号第2項、※3 規則第125条第1項第1号ロの(ハ)のb



まず、規則第3条第9号、第9号の2により未指定特急券は指定急行券に含まれ、指定急行券は指定券に含まれます。
すなわち未指定特急券は指定券の一種ということになります。
払戻手数料も自由席特急券の220円ではなく、指定券と同額となる330円です。ただし有効日の前日・当日に払い戻しても発売額の3割ではなく330円です(※4)。
※4 規則第273条第2項

続いて使用開始前の変更である乗車券類変更を定めた規則第248条第1項では、同種類の他の乗車券類に変更を1回のみ認める一方、同第2項では未指定特急券を原券として同一列車群への同一区間の指定席特急券に変更する場合に限っては乗車券類変更の回数に含めないと定めています。同時に指定席特急券→未指定特急券への変更は禁止としています。

また、未指定特急券は指定席を確保することで指定席特急券に乗車券類変更と扱われることから、指定席確保済の未指定特急券というものは存在しません。
また未指定特急券→指定席特急券は列車群・区間が同一であれば変更の回数に含めないことから、原券となる未指定特急券で乗車券類変更が扱われていなければ変更後の指定席特急券をさらに変更することも可能、乗車券類変更済の未指定特急券であれば指定席特急券に変更した後でさらに変更することは不可と考えられます。

原券   変更後 可否 根拠となる規則
未指定特急券 原券と同一列車群・同一区間の指定席特急券
乗車券類変更の回数に含めない
第248条第2項「当該未指定特急券に指定された列車群に含まれる1個の特別急行列車を指定する場合であつて、かつ、未指定特急券の有効区間と変更後の指定席特急券の乗車区間が同一である場合に限り、乗車券類変更の回数に含まない」
未指定特急券から変更した指定席特急券 指定席特急券
[乗変]

乗車券類変更
乗車券類変更済の指定席特急券を発券
第248条第1項「当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更することができる」
未指定特急券 原券と異なる列車群・区間の指定席特急券
[乗変]

乗車券類変更
第248条第1項「当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更することができる」
未指定特急券 未指定特急券
[乗変]

乗車券類変更
第248条第1項「当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更することができる」
自由席特急券 未指定特急券
[乗変]

乗車券類変更
第248条第1項第5号「指定急行券以外の急行券又は自由席特別車両券から指定券への変更」
指定席特急券 未指定特急券 不可 第248条第2項「未指定特急券以外の指定券から未指定特急券への変更を請求することができない」
変更済の未指定特急券
[乗変]
原券と同一列車群・同一区間の指定席特急券
[乗変]

乗車券類変更の回数に含めない
乗車券類変更済の指定席特急券を発券
第248条第2項「当該未指定特急券に指定された列車群に含まれる1個の特別急行列車を指定する場合であつて、かつ、未指定特急券の有効区間と変更後の指定席特急券の乗車区間が同一である場合に限り、乗車券類変更の回数に含まない」
変更済の未指定特急券
[乗変]
原券と異なる列車群・区間の指定席特急券 不可 第248条第1項「1回に限つて、当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更することができる」
変更済の未指定特急券
[乗変]
未指定特急券 不可 第248条第1項「1回に限つて、当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更することができる」
変更済の自由席特急券
[乗変]
未指定特急券 不可 第248条第1項「1回に限つて、当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更することができる」
変更済の指定席特急券
[乗変]
未指定特急券 不可 第248条第1項「1回に限つて、当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更することができる」

上記の3月14日の立川→八王子間の成田エクスプレス号未指定特急券・乗車券を乗車券類変更し、3月15日の新宿→立川の成田エクスプレス未指定特急券・乗車券に変更しました。
券面には[乗変]が印字されます。


[乗変]が印字されてはいますが、同一列車群・同一区間の指定席特急券への変更は乗車券類変更の回数に含まれませんので指定席特急券への変更が可能です。指定席券売機はこの扱いに対応していました。

実際には指定席特急券は発券されず、原券に指定券発行済の印字を行い、指定券を追加で発券します。


指定券発行済が印字された未指定特急券と指定券の2枚になっていますが、規定上はこれで指定席特急券に乗車券類変更されたことになります。


この時は成田エクスプレス52号の時間に間に合わなかったため、後続列車となるかいじ123号の自由席に乗車できるかどうか伺ってみました。

未指定特急券は同一の列車群においては指定席特急券に変更することなく空席を利用できますが(※5)、列車群に含まれない列車は乗車できません(※6)。
※5 規則第172条の2、※6 規則第172条第1項
一方で東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程第272条の2第1項および第3項の規定により、指定席特急券で乗り遅れた場合は後続の特急列車の自由席に限り乗車できます。

成田エクスプレスの未指定特急券では、同じ区間であっても未指定特急券の座席としてあずさ号・かいじ号の指定席を確保できませんし、未指定特急券のままあずさ号・かいじ号自由席へも乗車できません。しかしながら未指定特急券で指定券の交付を受けたものは成田エクスプレス号の指定席特急券として扱われますので、乗り遅れ時は同区間の後続列車の自由席に乗車できるとのことでした。

【旅客営業規則】
(用語の意義)
第3条 この規則におけるおもな用語の意義は、次のとおりとする。
(中略)
(9)「指定券」とは、乗車日及び乗車列車を指定して発売する急行券(以下「指定急行券」という。)、特別車両券(指定席特別車両券(A)及び指定席特別車両券(B)に限る。以下これらを「指定特別車両券」という。)、寝台券、コンパートメント券及び座席指定券をいう。
(9)の2「未指定特急券」とは、指定急行券のうち、旅客(団体旅客又は貸切旅客を除く。)が希望する場合に乗車日、有効区間及び全車両指定制の1個以上の特別急行列車(以下「列車群」という。)を指定し、座席の使用を条件としないで発売する特別急行券をいう。
(以下略)

(大人急行料金)
第125条 大人急行料金は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)特別急行料金
イ 新幹線
(中略)
ロ 新幹線以外の線区
(イ)〜(ロ) 略
(ハ)第57条の3第2項の規定により発売する場合で、当該区間東日本旅客鉄道会社線(ただし、別に定める場合を除く。)並びに海峡線、江差線及び函館本線五稜郭・函館間内相互発着となる場合の特別急行料金
a b以外の特別急行料金 (中略)
b 別表第1号の2第1項に定める列車群に含まれる特別急行列車に対して適用する特別急行料金
(a)旅客が列車に乗車する前に発売する指定席特急券に適用する指定席特急料金
次表に定める料金とする。ただし、第57条の3第3項の規定により発売するものにあつては同表に定める料金から520円を低減した額とする。

営業キロ地帯 50キロメートルまで 100キロメートルまで 150キロメートルまで 200キロメートルまで 300キロメートルまで
料金 750円 1,000円 1,550円 2,200円 2,500円

(b)旅客が列車に乗車した後に車内で発売する指定席特急券に適用する指定席特急料金
次表に定める料金とする。ただし、第57条の3第3項の規定により発売するものにあつては(a)の表に定める料金から520円を低減した額とする。

営業キロ地帯 50キロメートルまで 100キロメートルまで 150キロメートルまで 200キロメートルまで 300キロメートルまで
料金 1,010円 1,260円 1,810円 2,460円 2,760円

(中略)
2 第57条第1項第1号イの(ニ)の規定により発売する未指定特急券特別急行料金は、同条同項同号イの(イ)の規定により発売する指定席特急券特別急行料金と同額とする。
(以下略)

(急行券の効力)
第172条 指定急行券を所持する旅客は、その券面に指定された急行列車(未指定特急券にあつては、券面に指定された列車群に含まれる1個の特別急行列車)に限つて、券面に区間又は営業キロ地帯が表示されているときは、当該区間又は当該営業キロ地帯内の最遠の停車駅まで乗車することができる。
(以下略)

(未指定特急券の効力)
第172条の2 未指定特急券を所持する旅客は、前条第1項の規定によるほか、乗車した列車に空席がある場合は座席を使用することができる。ただし、当該座席に有効な指定席特急券を所持する他の旅客が乗車した場合又は満席の場合は、立席の利用となる。

(乗車券類変更)
第248条 普通乗車券、急行券、特別車両券、寝台券、コンパートメント券又は座席指定券を所持する旅客は、旅行開始前又は使用開始前に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、1回に限つて、当該乗車券類から同種類の他の乗車券類に変更(この変更を「乗車券類変更」という。)することができる。ただし、次の各号に定める乗車券類の変更については、これを同種類のものとみなして取り扱うことができる。
(1)普通乗車券相互間の変更
(2)指定急行券以外の急行券相互間の変更
(3)自由席特別車両券(急行・自由席特別車両券(A)を含む。以下この条において同じ。)相互間の変更
(4)指定券(急行・指定席特別車両券(A)、急行・寝台券、急行・コンパートメント券及び急行・座席指定券を含む。以下この条において同じ。)相互間の変更
(5)指定急行券以外の急行券又は自由席特別車両券から指定券への変更
2 前項の規定にかかわらず、未指定特急券から未指定特急券以外の指定席特急券への乗車券類変更は、当該未指定特急券に指定された列車群に含まれる1個の特別急行列車を指定する場合であつて、かつ、未指定特急券の有効区間と変更後の指定席特急券の乗車区間が同一である場合に限り、乗車券類変更の回数に含まない。ただし、未指定特急券以外の指定券から未指定特急券への変更を請求することができない。
(以下略)

(指定券に対する料金の払いもどし)
第273条 略
2 旅客は、未指定特急券が不要となつた場合は、その券面に表示された乗車日までに駅に差し出したときに限つて、1枚につき330円の手数料を支払い、当該未指定特急券に対する特別急行料金の払いもどしを請求することができる。
(以下略)

別表第1号の2(第57条)列車群

群名 特別急行列車
1 (1) ひたち・ときわ イ ひたち号
ロ ときわ号
ハ 別に定める列車
  (2) スワローあかぎ イ スワローあかぎ
別に定める列車
2 - 成田エクスプレス イ 成田エクスプレス
ロ 別に定める列車

【旅客営業取扱基準規程】
(列車出発後の指定券に対する特例扱い)
第272条の2 新幹線の特別急行列車の指定席特急券(急行・指定席特別車両券(A)を含む。)又は立席特急券を所持する旅客が、当該指定券に表示された列車の乗車駅出発時刻後に、乗車列車の変更を申し出た場合は、原指定券に表示された列車の乗車日に同駅を出発する他の新幹線の特別急行列車の自由席を使用するときに限り乗車(原指定券に表示された乗車区間内に限る。)の取扱いをすることができる。この場合、旅客が所持する原指定券に次に掲げる印を押して取り扱うものとする。(様式略)
2 略
3 新幹線以外の線区の特別急行列車の指定席特急券(急行・指定席特別車両券(A)を含む。)又は立席特急券を所持する旅客が、当該指定券に表示された列車の乗車駅出発時刻後に、乗車列車の変更を申し出た場合(普通急行列車に変更し、指定席以外の座席を使用することを申し出た場合を含む。)は、前各項の規定を準用して乗車の取扱いをすることができる。