乗継割引の2回適用

小田原→熱海の新幹線特定特急券、熱海→高松のサンライズ瀬戸特急券・B寝台シングル個室の寝台券、高松→牟岐うずしお号・むろと号の特急券です。
サンライズ瀬戸号、うずしお号・むろと号の特急券に乗継割引が適用されています。




東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第57条の2では乗継割引の急行券(特急券含む。以下同)の発売について定めています。第1号のイで新幹線と在来線特急列車を乗り継ぐ際に在来線特急料金が半額になるのは知られていますが、サンライズ瀬戸号と四国内の特急を坂出または高松で乗り継ぐ場合も割引となります。
高松→牟岐間の特急券は徳島でうずしお号とむろと号を乗り換えています。規則第57条第2項第4号の規定により、徳島で改札を出ない場合は1個列車とみなして特急券が発売されます。

すなわち、今回の特急券は「新幹線→サンライズ瀬戸号(熱海乗換)」で在来線の乗継割引、「サンライズ瀬戸号→うずしお号・むろと号(高松乗換)」で四国内特急の乗継割引が適用されています。A(新幹線)→B(サンライズ瀬戸号)→C(うずしお号・むろと号)と特急列車3列車(うずしお号・むろと号で1個列車)を乗り継ぎ、BとCの特急券に乗継割引が適用されています。
このような乗継割引は割引の二重適用として断られることもあるようですが、規則第76条で禁じる一つの乗車券類への複数の割引適用ではなく(学割と往復割引、ジパング倶楽部割引と往復割引など併用可能な割引もあり)、また規則第57条の2第1号の括弧書きで「同一の急行列車を先乗列車及び後乗列車として直接乗継ぎをする場合を含む。」とあるとおり、3列車乗り継ぎで2列車に乗継割引を適用することが可能です。

今回のパターンの他、東京、はやぶさ号、新青森スーパー白鳥号、函館、スーパー北斗号、札幌のような3列車乗継でもスーパー白鳥号とスーパー北斗号の両方が割引になります。
函館・五稜郭を接続駅とする割引は、津軽海峡線の特急料金に新青森乗り換えの乗継割引が適用されることが条件です。つまり3列車乗継の場合に限定される割引です。
※なお、在来線特急→新幹線→在来線特急の乗り継ぎも「同一の急行列車(=新幹線)を先乗列車及び後乗列車として直接乗継ぎをする場合」ではありますが、割引となる特急料金は前後の在来線特急のうちどちから一方のみ(通常、高額な方の列車)です。

特急料金は以下のとおりです。なお、4月29日・30日の指定席は繁忙期特急料金が適用されます。
(1)小田原→熱海:新幹線の隣駅ですので自由席利用時は特定特急券が発売されます。特急料金は860円です。
(2)熱海→高松:営業キロ700.1kmに対する通常期特急料金は3760円です。寝台利用時は指定席料金相当額の520円が引かれ特急料金は3240円、新幹線からの乗継割引適用で半額となり1620円です。これにサンライズ瀬戸号B寝台シングル個室料金7560円が加えられ、合計9180円です。
(3)高松→牟岐:徳島で改札を出ない乗り換えですので、高松〜牟岐間の営業キロ144.2kmに対する特急料金2350円、繁忙期加算200円と合わせて2550円、サンライズ瀬戸号からの乗継割引で半額となり1270円です。


マルスシステムは自動的に乗継割引を適用した特急券の発券が可能で、割引が適用される列車には大きく[乗継]、割引とならない列車(規則第57条の2第1号で○印がない列車)には小さく乗継が印字されます。
規則第57条の2第1号のロにより青森駅乗り換えで乗継割引が適用される例です。奥羽本線特急券には小さく乗継が、津軽海峡線特急券には四角で囲んだ大きい[乗継]が印字されています。


しかしながら3列車乗継の場合は、先乗列車かつ後乗列車となる列車(今回の場合、サンライズ瀬戸号)に大きい乗継と小さい乗継の両方を印字することができないようで、乗継割引を意味する大きい乗継のみ印字した特急券を発券し、小さい乗継ははんこで押印となりました。
規則第188条第1項第10号の規定では、規則第57条の2の割引に対する証明は[乗継]だけであり、先乗列車・後乗列車とも証明方法に差はありません。大きい乗継・小さい乗継というのはマルスシステムの印字における便宜上の表示です。マルス印字の乗継とはんこによる乗継は表示の意味としては同じですので、サンライズ瀬戸号の特急券に両方を表示する必要は無いようにも思います。なお、規定上は特急券の他に乗車券にも乗継の証明が必要ですが、いままで扱われたことはありません。

(旅客運賃・料金割引の重複適用の禁止)
第76条 旅客は、旅客運賃・料金について2以上の割引条件に該当する場合であつても、同一の乗車券類について、重複して旅客運賃・料金の割引を請求することができない。
2 前項の規定にかかわらず、学生割引普通乗車券を購入する旅客は、第94条に規定する往復割引の普通旅客運賃に対して、第92条に規定する学生割引の適用を請求することができる。

(急行券の発売)
第57条 旅客が、急行列車に乗車する場合は、次の各号に定めるところにより、急行列車ごとに特別急行券又は普通急行券を発売する。
(中略)
2 前項本文の規定にかかわらず、次の各号に定めるところにより急行列車に乗車するときは、1個の急行列車とみなして1枚の急行券を発売する。
(1)〜(3)略
(4)岡山・牟岐間の特別急行列車の停車駅相互間を乗車する場合であつて、徳島駅において出場しないで乗継ぎとなるとき。
(以下略)

(乗継急行券の発売)
第57条の2 旅客が、急行列車相互間に乗継ぎをする場合で、次の各号に該当するとき(以下「乗継条件」という。)は、第1号に規定する○印の1個の急行列車に対して割引の急行券を発売する。ただし、設備定員が複数の寝台個室及び別に定める特別急行列車の個室に乗車する場合に発売する特別急行券については、割引の取扱いをしない。
(1)次に掲げる急行列車相互間について、それぞれに定める乗継駅において直接乗継ぎをする場合(同一の急行列車を先乗列車及び後乗列車として直接乗継ぎをする場合を含む。)

  急行列車 乗継駅
新幹線の特別急行列車
○その他の各線区の急行列車(本四備讃線を経由する急行列車と
四国内の急行列車を坂出駅又は高松駅で相互に乗継ぐ場合は、
岡山駅を乗継駅とする急行列車に限る。)

ただし、次に掲げる急行列車は除く。
(イ)新青森駅又は青森駅を乗継駅として乗車する寝台車を連結した特別急行列車
(ロ)奥羽本線を経由する急行列車(新青森・青森間のみを乗車する場合に限る。)
新横浜・新下関間の新幹線停車駅、新青森駅
青森駅(新青森駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)、
長岡駅新潟駅長野駅直江津駅(上越妙高駅
直通して運転する急行列車に乗車し、上越妙高駅
新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)、金沢駅
津幡駅(金沢駅に直通して運転する急行列車に乗車し、
金沢駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)、
大阪駅(新大阪駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)、
又は坂出駅若しくは高松駅(いずれも岡山駅で新幹線と
乗り継ぐ場合に限る。)
奥羽本線を経由する特別急行列車(津軽新城以遠(鶴ヶ坂方面)の各駅と
新青森駅又は青森駅との相互間を乗車する場合に限る。)

津軽線及び海峡線を経由する急行列車(新青森駅又は青森駅津軽今別以遠
(木古内方面)の各駅との相互間を乗車する場合に限る。)
新青森駅又は青森駅
 
特別急行列車サンライズ瀬戸
○四国内の急行列車
坂出駅又は高松駅

(2)乗継ぎをする後乗列車の乗車日が先乗列車の乗車日の当日又は翌日である場合。ただし、前号イの場合で、新幹線の特別急行列車を先乗列車とするときは、後乗列車の乗車日が先乗列車の乗車日の当日である場合に限る。
(3)当該乗車に必要な乗車券及び急行券を同時に購入し、又は当該乗車に必要な乗車券を呈示して、先乗列車及び後乗列車の急行券を同時に購入し、これに相当の証明を受けた場合。

(旅客運賃・料金の割引等に対する表示)
第188条 旅客運賃・料金の割引等を行う乗車券類には、その証として、関係券片の表面(第8号に規定する記号については表面)に、ゴム印の押なつにより、次の各号に定める記号等の表示を行う。ただし、特に設備する乗車券類、第8号に規定する記号については、これと異なる表示方をし、又はこの表示を省略することがある。
(1)〜(9)略
(10)第57条の2又は第61条の2の規定により証明をする乗車券、急行券及び座席指定券に対するもの [乗継]
(以下略)