県駅の乗車券

立川から(あがた)への片道乗車券です。久喜を接続駅とするJR東日本東武鉄道の連絡乗車券です。

経路は以下のとおりです。
立川(中央本線)新宿(山手線)代々木(中央本線)神田(東京折返・東北新幹線)大宮(東北本線)久喜(伊勢崎線)県

東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第70条の規定により同条区間が最短経路で運賃計算されるため、JR線の運賃計算経路は以下と同じとなります。
立川(中央本線)新宿(山手線)池袋(赤羽線)赤羽(東北本線)久喜

JR線73.2km 1280円、東武線34.1km 450円で、合計107.3km 1730円となります(当時。現行はJR1320円、東武線470円で合計1790円)。
片道100kmを超え、新幹線を経由するので大都市近郊区間内相互発着の乗車券ではありません。このため2日間有効で途中下車可となります。


この乗車券を購入した当時の久喜を接続駅とするJR東日本東武鉄道の連絡範囲は以下のとおりでした。現在では概ね東京近郊区間内に縮小されています。
JR東日本東海道本線(※)、南武線武蔵野線横浜線横須賀線中央本線 吉祥寺〜甲府間、青梅線五日市線八高線東北本線 川口〜白河間・戸田公園〜北与野間、常磐線 松戸〜日立間、川越線高崎線上越線 高崎問屋町〜越後湯沢間、吾妻線両毛線水戸線日光線烏山線信越本線(北陸新幹線) 北高崎〜横川間・安中榛名〜上田間、総武本線京葉線外房線内房線成田線東金線
東武鉄道伊勢崎線亀戸線 亀戸、大師線 大師前、野田線 岩槻〜柏間、佐野線、小泉線桐生線
※東京都区内・横浜市内の各駅を含む。


県駅は栃木県足利市にある東武鉄道伊勢崎線無人駅で自動券売機や自動改札機はなく、簡易型のICカード改札機のみ設置されています。駅では乗車券の購入、ICカードのチャージ、どちらもできません。


この駅からの乗車券は駅前の自転車預かり所で委託販売されていましたが、2014年4月の運賃改定に合わせて終了したようです。県から140円区間・160円区間・190円区間の大人用3種類のみ扱っていました。東武鉄道によると1日あたりの乗降人員は566人です。
県駅の駅構内には委託販売所として自転車預り所のことを記した看板が設置されていますが、見た目は完全に民家で他の委託販売所にある「東武鉄道 きっぷ販売所」の表示がありません。窓ガラスに県駅の時刻表が貼られており、かろうじて東武鉄道の関連?を見て取ることができました。営業時間は朝7時頃から終列車までとなっていました。

○ム 県から東武線140円区間ゆきの片道乗車券です。


県駅には委託販売を行っていた頃から乗降車駅証明書発行機が設置されており、乗車券を購入せず乗車することも可能でした。現在はこの方法のみとなっています。降車時にICカードの残額が不足していた場合などの証明にも使えるよう「乗降車」の証明となっています。


乗車券の「○ム」表示は「無人駅のム」というわけではなく、例えばJR東日本においては「乗車券の発売区間に制限のある駅において、その発売区間外の普通乗車券の発売の請求があった場合(東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第27条第2項および同旅客営業取扱基準規程(以下、基準規程)第44条第1項)」に表示されることになっています。実際には旅客の請求によらず、一律で印字されています。
○ム扱いで発売された乗車券は旅客が希望する区間へ変更する際、旅客都合の変更と区別するため、通常の「区間変更」とは異なる「買替え」としています。

【旅客営業規則】
(普通乗車券の特殊発売)
第27条 旅客が列車内において普通乗車券の発売を請求する場合、当該列車の係員が携帯する普通乗車券ではその請求に応じられないときは、普通旅客運賃(旅客が旅客運賃割引証を所持する場合又は旅客の請求する区間について旅客運賃割引の 取扱いができる場合であつても、無割引の普通旅客運賃)を収受して、係員がその携帯する普通乗車券によつて乗車方向の最遠の駅又は乗継駅までのものを発売し、同乗車券の券面に、途中駅まで発売した旨を表示する。
2 前項の規定は、第21条の2の規定により乗車券の発売区間に制限のある駅において、その発売区間外の普通乗車券の発売の請求があつた場合に準用する。
3 前各項の規定によつて発売した乗車券を所持する旅客に対しては、前途の駅又は車内において、これと引換に旅客の請求する区間の普通乗車券を発売する。この場合、既に収受した旅客運賃と旅客の請求する区間の普通旅客運賃(旅客が旅客運賃割引証を提出した場合又は旅客の請求する区間について旅客運賃割引の取扱いができる場合は、割引の普通旅客運賃)とを比較して不足額を収受し、過剰額は駅(取扱箇所が車内の場合にあつては前途の駅)において払いもどしをする。

【旅客営業取扱基準規程】
(普通乗車券の特殊発売方)
第44条 規則第27条第1項又は同条第2項の規定により普通乗車券を発売する場合は、その乗車券の表面に「(ム)」の表示をして発売するものとする。この場合、前途の駅又は車内においてその乗車券と引換えに旅客の請求する全区間の乗車券を発売する(以下これを「買替え」という。) 旨を案内しなければならない。
2 前項の場合、旅客が旅客運賃割引証を提出したときは、全区間のものを発売する前途の駅又は車内までこれを所持するように案内するものとする。
3 規則第27条第3項の規定により旅客から全区間の乗車券を請求された場合は、原乗車券を回収し、常備片道乗車券、補充片道乗車券又は特別補充券によつて発売するものとする。この場合の有効期間は、全区間に対する所定の有効期間からすでに経過した日数(取扱いの当日は含めない。) を差し引いた残余の日数とし、常備片道乗車券を使用する場合に有効期間の訂正を要するときは、第195条の規定を準用して取り扱うものとする。
4 前項の場合、旅客の所持する乗車券が金額式の普通乗車券で、かつ、車内において取り扱うときは、原乗車券を回収しないで、特別補充券とともに所持させることができる。


区間変更と買替えは、規定上は旅客都合による旅行中止時に顕著な差があります。
使用開始後の乗車券は規則第274条の規定により、使っていない区間が100kmを超える場合は払い戻しできることにはなっていますが、厳密には「乗車変更の取扱いをしたため100キロメートルを超える場合」(※)は乗車しない区間が100kmを超えていても払い戻しできません。
※「区間変更」ではなく「乗車変更」により100kmを超える場合となっています。乗車変更は使用開始前の変更である乗車券類変更と、使用開始後の変更である区間変更・種類変更・指定券変更・団体乗車券変更の総称(規則第241条)ですので、例えば使用開始前の140円区間乗車券を長距離乗車券に変更した場合も、使用開始後は払戻しできないことになってしまうのでしょうか……?なお、基準規程の本文は「区間変更の取扱いを……」ですが、条文の見出しは「乗車変更後旅行を中止……」と、一致していません。緩和されるのは区間変更後の乗車券のみとなっています。
つまり「新宿→東日本会社線140円区間」を原券に「[区]東京都区内→[阪]大阪市内」に使用開始後に変更した場合、途中駅での払戻しはできないことになってしまいます。買替えの場合は乗車券の発売ですのでこのような制約はありません。
ただし、実際には基準規程第334条によりこの規定は緩和されており、近距離乗車券から区間変更した場合も払戻しすることは可能です。従って実質的に買替えと区間変更における差はなく、またJRにおいてはマルスシステムが買替えでの発券に対応していないこともあり、多くの場合は区間変更または原券払戻+片道乗車券の発売で処理されることがほとんどです。

【旅客営業規則】
(乗車変更の種類)
第241条 旅客が、その所持する乗車券類に表示された運送条件と異なる条件の乗車を必要とする場合に当社が取り扱う変更(この変更を「乗車変更」という。)の種類は、乗車変更の申出の時期に応じて、次の各号のとおりとする。
(1)当該乗車券類による旅行開始前又は使用開始前に申出があつた場合
 乗車券類変更
(2)当該乗車券類による旅行開始後又は使用開始後に申出があつた場合
 イ 区間変更
 ロ 種類変更
 ハ 指定券変更
 ニ 団体乗車券変更

(旅行開始後又は使用開始後の旅客運賃の払いもどし)
第274条 旅客は、普通乗車券を使用して旅行を開始した後、旅行を中止した場合は、その乗車券が、有効期間内であつて、かつ、その乗車しない区間営業キロが、100キロメートルを超えるとき(乗車変更の取扱いをしたため100キロメートルを超える場合を除く。)に限つて、これをその旅行を中止した駅に差し出し、既に支払つた旅客運賃から既に乗車した区間の普通旅客運賃(当該乗車券が往復割引普通乗車券以外の割引乗車券で、旅行を中止しても既に乗車した区間だけでその割引条件を満たすときは、割引普通旅客運賃)を差し引いた残額の払いもどしを請求することができる。この場合、旅客は、手数料として、乗車券1枚につき220円を支払うものとする。
(以下略)

【旅客営業取扱基準規程】
(乗車変更後旅行を中止する場合の旅客運賃の払いもどしの取扱方)
第334条 普通乗車券を所持する旅客が、区間変更の取扱いを受けた後旅行を中止し、規則第274条の規定による旅客運賃の払いもどしを請求した場合は、変更区間を通じた区間について発駅で購入したものとみなして取り扱うものとする。

県から県への片道乗車券です。東武鉄道の特別補充券で発売されました。経由欄は「多々良、成島」とあります。


経路は県(伊勢崎線)館林(小泉線)太田(伊勢崎線)県です。営業キロは40.2km、運賃は570円(現行590円)です。
この時は県→東武線140円区間の乗車券を原券に県→県への一周乗車券に変更を申し出ました。原券140円を一旦返金し、改めて一周の片道乗車券が発売されました。一周乗車券は東武鉄道のマルチ端末で発券できないようなので特別補充券での発売となります。



県から県への買替えの乗車券です。同じく東武鉄道の特別補充券により発売されました。
○ム 県→東武線190円区間の乗車券を原券に一周乗車券へ変更を申し出ました。


原券欄に○ム 県、片道乗車券190円と記入し、県から県(多々良・成島経由)の一周570円との差額380円を収受し発売されました。
東武鉄道にも買替えの規定はありますが、手続き上は原券を払戻し新規発売とした方が簡単なようです。今までに事由が「買替」の乗車券を手にしたのはこの時だけです。



県から横浜への片道乗車券です。経路は県(伊勢崎線)北千住(常磐線)日暮里(東北本線)上野(東北新幹線)東京(東海道本線)横浜です。


春日部駅で県駅の乗降車駅証明書を提示し購入を申し出ました。東武鉄道完結の場合、営業キロによらず途中下車できませんので最終下車駅での精算で事足りますが、JR連絡かつ途中下車可能となる区間の場合は分けて買うことで効力が変わってしまうことがあります。
記事欄に「上野〜東京(東北新幹線)」とあります。東武線74.4km860円(現行890円)、JR線39.8km620円(同640円)で合計114.2km、1480円(同1530円)です。片道100kmを超え、新幹線を経由していますので2日間有効、途中下車可能です。現在は東武鉄道では新幹線経由の連絡乗車券は規定上発売できなくなり、このような区間は発売できません。



東小泉駅で発売された竜舞から県への片道乗車券です。


竜舞駅も駅としては無人駅で、近隣の民家に乗車券発売を委託する簡易委託駅です。現在も乗車券の発売を行っているようです。
訪れた時は受託者が不在だったようで購入できず、乗降車駅証明書を取って途中の東小泉駅で乗車券を購入しました。通常は下車駅での精算ですが県駅は無人駅のため、東小泉駅で他駅発となる乗車券単独の購入が可能でした。