山形新幹線の特定特急料金(福島乗継)

郡山から米沢への自由席特急券です。


発売額は1380円、内訳は在来線部分が520円、新幹線部分が860円です。
福島乗り継ぎ(直通列車利用を含む)の特急券は本来新幹線と在来線で別個のものではありますが、東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第57条の3第4項の条件(当日中の乗り継ぎであること、乗車券・特急券を同時に購入又は提示し券面に証明を受けること)を満たす場合、在来線部分を特定料金で発売します。
新幹線は郡山→福島が隣駅ですので860円、在来線は福島→米沢が奥羽本線40.1km、50kmまでのA特急料金750円に対し、3割引の特定特急料金520円です。特定料金を適用した証明として規則第188条第1項第11号に規定される「幹在特」が印字されます。


ところで新幹線と在来線の直通列車に対する特急券が1枚で発券されるのは規則第184条第6項の規定がありますが、「1枚のものとすることがある」とあるとおり1枚とするのは強制ではなく、福島で分割した2枚の特急券とすることも可能です。

郡山から福島の新幹線特定特急券と、福島から米沢の自由席特急券です。


分割された場合も料金は同じで、新幹線860円、在来線520円です。
ただし、在来線特急券は普通に発売すると通常のA特急料金で発売されてしまいます。乗継用の特定料金を適用した特急券を単独で発売するには、列車名をダミー列車「東北(幹)福島乗継」の自由席で発売する必要があります。券番号からすると在来線→新幹線の順に発券したようです。
ところで、規則第57条の3第4項第2号では乗車券及び特急券に「相当の証明」を受けることが特定料金適用の条件とあります。相当の証明とは規則第188条第1項第11号の「幹在特」ですが、乗継割引の特急券は先乗列車と後乗列車の両方に「乗継」が印字されるのに対し、今回は新幹線特急券は証明なし、在来線特急券は証明ありで発売されました。以下に示す指定席券売機で購入した特急券でも同様の結果です。規定上は乗車券を含め関連する乗車券類全てに証明をすることになってはいますが、どうも特定料金が適用される特急券にしか幹在特を印字はしないようです。

これだけ見ると、元々2種類ものを1枚にまとめるのが一般的である特急券をただ分割しただけに見えますが、1枚と2枚では払戻しの場合の扱いが異なってきます。
前述のとおり、今回の特急券は新幹線特急券と在来線特急券の2種類の特急券です。1枚にまとめられている場合も本来は2枚分の払戻手数料が必要となるのですが、規則第273条の2第6項の規定において、1枚で発券された幹在直通の特急券は手数料も1枚分とすると定められています(※)。
※かつては1枚にまとまっていても2枚分の払戻手数料が必要でしたが、2003年頃の規則改正で改められました。

すなわち郡山→米沢の払戻手数料は1枚分220円、郡山→福島+福島→米沢の払戻手数料は2枚分440円となります。
2枚に分けることで手数料が変わってしまうことから、今回のような1枚で発券できるものを2枚で発売することは通常ありません。発売箇所は伏せておきます。

直通方向の乗継は1枚で発券できますが、白石蔵王以遠と米沢以遠、いわて沼宮内以遠と雫石以遠のような直通運転のない区間については通しでの発券ができず、必ず乗り継ぎ駅で分割した2枚の特急券として発売されます。


白石蔵王から福島と、福島から米沢の特急券です。
在来線特急券に特定料金が適用されますが、1枚では発売できません。


幹在直通の特急券を払戻時に1枚の特急券とみなすのは規則第273条の2第6項の規定通り、福島乗継の山形新幹線だけでなく盛岡乗継の秋田新幹線(田沢湖線奥羽本線特急)、越後湯沢乗継の上越新幹線(ガーラ湯沢発着、上越線特急)でも同様です。一方で同条第7項の規定により博多南線については新幹線と在来線の特急券を別個のものとして扱います。
ただし現行のマルスシステム上、東海道・山陽・九州新幹線博多南線特急券は1枚で発券できないようです。

(特定の特別急行券の発売)
第57条の3 第57条第1項第1号イの規定により指定席特急券を発売する場合で、次の各号に掲げる期間内の日に特別車両及びコンパートメント個室以外の座席車に乗車するときは、特定の特別急行料金によつて指定席特急券を発売する。ただし、乗車する列車を限定して発売することがある。
(中略)
4 旅客が、東北本線(新幹線)の特別急行列車と奥羽本線福島・新庄間の特別急行列車(第57条第2項第6号の規定により1個の特別急行列車とみなす場合を含む。)とを福島駅において直接乗継ぎをする場合(当該線区を直通して運転する列車に乗車する場合を含む。)、又は東北本線(新幹線)若しくは東北新幹線特別急行列車と田沢湖線奥羽本線大曲・秋田間の特別急行列車とを盛岡駅において直接乗継ぎをする場合(当該線区を直通して運転する列車に乗車する場合を含む。)で、次の各号に該当するときは、奥羽本線福島・新庄間及び盛岡・秋田間の1個の特別急行列車に対して別に定める特定の特別急行料金によつて指定席特急券立席特急券、自由席特急券又は特定特急券を発売する。
(1)乗継ぎをする後乗列車の乗車日が先乗列車の乗車日の当日である場合
(2)当該乗車に必要な乗車券及び特別急行券を同時に購入し、又は当該乗車に必要な乗車券を呈示して、先乗列車及び後乗列車の特別急行券を同時に購入し、これに相当の証明を受けた場合
(以下略)

(この章に規定する乗車券類の様式の変更又は補足等)
第184条 この章において規定する乗車券類の様式は、印刷上の形式であつて、それぞれの乗車券類は、相当の事項を印刷するとともに、発売する際に、不足する事項又は印刷する事項を記入式とした事項等については、印章を押し、記載し、切断し、又は入鋏する等の方法によつて補うものとする。
(中略)
6 新幹線と新幹線以外の線区を直通して運転する特別急行列車に乗車する場合に発売する特別急行券又は特別車両券については、新幹線の特別急行券又は特別車両券と新幹線以外の線区に対する特別急行券又は特別車両券を1枚のものとすることがある。
また、普通乗車券と当該特別急行券又は特別車両券とは1枚のものとすることがある。
(以下略)

(旅客運賃・料金の割引等に対する表示)
第188条 旅客運賃・料金の割引等を行う乗車券類には、その証として、関係券片の表面(第8号に規定する記号については表面)に、ゴム印の押なつにより、次の各号に定める記号等の表示を行う。ただし、特に設備する乗車券類、第8号に規定する記号については、これと異なる表示方をし、又はこの表示を省略することがある。
(1)〜(10)略
(11)第57条の3第4項の規定により証明する乗車券及び特別急行券に対するもの
[幹在特]又は「幹在特」
(以下略)

(手数料の収受)
第237条の2 第18条に規定にする乗車券類のうち、2種類以上の乗車券類を1葉とした乗車券類について、払いもどしをする場合で、手数料を収受するときには、別に定める場合を除き、普通乗車券、急行券、特別車両券、寝台券、コンパートメント券又は座席指定券を各別のものとして手数料を収受する。
(中略)
6 第184条第6項の規定により新幹線と新幹線以外の線区を直通して運転する特別急行列車に乗車(新幹線と新幹線以外の特別急行列車を途中出場しないで乗り継ぐ場合を含む。以下同じ。)する旅客に対して1枚で発売した特別急行券の両方を同時に払いもどしをする場合で、手数料を収受するときは、1枚の特別急行券として手数料を収受する。この場合、全区間又は一部区間について乗車列車を指定している場合は、全区間の指定急行券とみなして取り扱うものとする。
7 前項にかかわらず、新幹線の特別急行券と博多南線特別急行券を1枚で発売した特別急行券について、払いもどしをする場合で、手数料を収受するときは、新幹線の特別急行券と博多南線特別急行券を各別のものとして取り扱う。