旧運賃乗車券の区間変更

新宿から熊川への区間変更券です。
特急列車の車掌さんが所持する車内補充券発行機により発券されたものです。


この区間変更券は新宿→立川の旧運賃乗車券(450円、現行470円)を原券として車内で変更した際に発券されました。

区間営業キロ・運賃は以下のとおりです。
新宿→立川 27.2km、現行運賃470円(IC運賃464円)、旧運賃450円
新宿→熊川 35.2km、現行運賃640円(IC運賃637円)、旧運賃620円

原券は大都市近郊区間内相互かつ片道100km以内の乗車券ですので、区間変更の場合は東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第249条第2項第1号ロの規定により、乗車区間に対する運賃と原券運賃の差額が精算額になります。乗車区間である新宿→熊川の旧運賃620円と、原券運賃450円の差額170円が収受額となります。
旧運賃の乗車券については、区間変更(乗越精算等)の場合においても旧運賃が基準となりますが、JR東日本の車内補充券発行機は消費税増税前の旧運賃・料金には対応しておらず、新運賃・料金のものしか発券できないとのことでした。

このような場合、通常であれば車内で精算は行わず着駅での精算となるところですが、五日市線 熊川駅は7:35から15:55を除き無人駅です。
五日市線熊川駅は、2015年4月1日から終日無人駅となりました。
したがって新運賃で区間変更が行われました。新運賃640円と原券450円の差額190円が収受され、差額は後日返金されます。その証明として券面に「新運賃・料金概算収受」のはんこが押印されました。車内補充券発行機には概算収受の機能があります(「片道乗車券 東京→新宿 概算1,000円(壱千円)」のように発券されます※1)が、区間変更の場合は精算額でしか行えないためこのように扱われるものと思われます。「概算収受」の乗車券を手にしたのは今までこの時だけです。
※1 規程第236条第1項第4号クの(ア)により、概算金額は漢字とすることが定められています。

概算収受については規則第75条および東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程(以下、規程)第113条に定められています。



なお、自動精算機では旧運賃マルス券からの精算に対応しておらず、改札窓口での精算となりました。
近距離券売機で発券された旧運賃の乗車券(3月31日発売の往復乗車券、新幹線経由の長距離乗車券等)がどう扱われるかは不明ですが、おそらく不可なのではないでしょうか。




一方で改札内指定席券売機においては差額精算となる場合に限り乗車券の区間変更が可能で、旧運賃を原券とした場合は旧運賃との差額による区間変更券が発券可能です。
立川から東京への区間変更券です。


立川から新宿への旧運賃450円の乗車券を原券として新宿駅改札内指定席券売機で東京までに変更しました。立川→東京の旧運賃620円との差額である170円が収受額となります。
規則第248条に定められる使用開始前の乗車券類変更とは異なりますので「乗変(旧運賃の場合は「乗変/0330」のように原券発売日も印字)」は印字されません。
一方で区間変更後の乗車券を払い戻す場合やさらに変更する場合を想定してか、原券発売日が「(原)0330」と印字されています。本来(原)の印字は「原券発行日と車内補充券の発行日が異なる場合(の原券発売日)」を意味するものです。

なお「区変(規程第235条第1項第1号エ(ア))」「乗変(規程第235条第1項第1号ウ)」「(原)何月何日(規程第238条第1項第11号カ)」については規程でそれぞれ定められています。
※これらの規程は補充券の記入についての定めですが、車内補充券発行機や改札内指定席券売機でも同じ考え方なのでしょう。

【旅客営業規則】
(旅客運賃・料金の概算収受)
第75条 車内において旅客運賃・料金を収受する場合は、旅客運賃・料金の概算額を収受することがある。
2 前項の規定によつて収受した概算額は、前途の駅において旅客の申出によつて精算する。

(区間変更)
第249条 普通乗車券、自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券を所持する旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、当該乗車券類に表示された着駅、営業キロ又は経路について、次の各号に定める変更(この変更を「区間変更」という。)をすることができる。
(1)着駅又は営業キロを、当該着駅を超えた駅又は当該営業キロを超えた営業キロへの変更
(2)着駅を、当該着駅と異なる方向の駅への変更
(3)経路を、当該経路と異なる経路への変更
2 区間変更の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1)普通乗車券
 イ 次により取り扱う。この場合、原乗車券が割引普通乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)であつて、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、変更区間及び不乗区間に対する旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によつて計算する。
  (イ)前項第1号に規定する場合は、変更区間に対する普通旅客運賃を収受する。
  (ロ)前項第2号及び第3号に規定する場合は、変更区間(変更区間が2区間以上ある場合で、その変更区間の間に原乗車券の区間があるときは、これを変更区間とみなす。以下同じ。)に対する普通旅客運賃と、原乗車券の不乗区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。
 ロ イの場合において、原乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)が次のいずれかに該当するときは、原乗車券の区間に対するすでに収受した旅客運賃と、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。この場合、原乗車券が割引普通乗車券であつて、その割引が実際に乗車する区間に対しても適用のあるものであるときは、実際の乗車区間に対する普通旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によつて計算する。
  (イ)大都市近郊区間内にある駅相互発着の乗車券で、同区間内の駅に区間変更の取扱いをするとき。
  (ロ)片道の乗車区間営業キロが100キロメートル以内の普通乗車券で区間変更の取扱いをするとき。
(2)自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券
原乗車券類に対するすでに収受した料金と、実際の乗車区間営業キロ又は同区間に対する料金とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。


【旅客営業取扱基準規程】
(概算額の収受方)
第113条 規則第75条の規定による旅客運賃及び料金の概算額の収受は、精算額による取扱いのできない場合等やむをえない場合に限り、行うものとする。
2 前項の規定により収受する概算額は、旅客運賃及び料金額(見積額を含む。) を超える額を収受するよう努め、前途の駅において精算する旨を案内するようにしなければならない。
(注) 概算額は、旅客運賃及び料金額を著しく超えないように注意しなければならない。

(一般用特別補充券の各欄の記入方)
第235条 出札補充券、改札補充券、料金専用補充券及び車内補充券の各欄の記入方は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)事由欄は、次に掲げる略号を記入(略号が記入されている場合は、○でかこむ。)することができる。この場合、異なる種類のものを一葉として発行するときは、それぞれの略号を組み合わせて「片道特急」の例により記入する。ただし、乗車券類の代用として発行するとき及び前途の他列車に対して発行するときは、略号の後に「券」をつけるものとする。
ア 乗車券類の代用又は乗車券類の無札
   略
イ 別途乗車
   略
ウ 乗車券類変更
   乗変 この場合、記事欄に「(自)特急に変更」の例により記入する。
エ 区間変更
 (ア)区間変更
   区変
(以下略)

(一般用特別補充券の発行方)
第236条 一般用特別補充券は、次の各号に定めるところにより発行し、甲片は旅客に交付し、乙片(払いもどしの取扱いをするものを除き、旅客から回収した乗車券類とも)は別に定める改札日報、乗車券簿又は車掌区収入日報に添附して審査課長に提出する。この場合、不使用証明用として発行する車内補充券は、変更終了後、旅客に交付するものとする。
(1)出札補充券
  略
(2)改札補充券
  略
(3)料金専用補充券
  略
(4)車内補充券
ア〜キ
  略
ク 各欄の記入方は、前条の規定によるほか、次による。
(ア)概算額を収受した場合の領収額欄は、その収受金額を記入し、記事欄に「概算」と記入するほか、収受金額を漢字で「(壱千参百円)」の例により記入する。
(以下略)

(駅名式特殊区間用特別補充券の発行方)
第238条 駅名式特殊区間用特別補充券は、一般用特別補充券の代用として、次の各号に定めるところにより発行し、甲片は旅客に交付し、乙片は車掌区収入日報に添附して審査課長に提出するものとする。
(1)〜(10)
 略
(11)記事欄の表示方は、次による。
ア〜オ
  略
カ 原乗車券の発行日と車内補充券の発行日とが異なる場合は、「(原)何月何日」の例により記入する。
(以下略)