2013年10月15日に、東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第130条が改定されました。
個室の特別車両料金(グリーン車料金)に特別急行列車 ななつ星in九州号の料金が追加されています。
そこで今回は、ななつ星in九州号の代金(ツアー参加費)を考えてみようと思います。
(特別車両料金)
第130条 特別車両料金は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)特別車両料金(A)
イ ロ以外の特別車両料金(A)
(略)ロ 新幹線の特別急行列車及び新幹線以外の線区の別に定める特別急行列車の個室に対して適用する特別車両料金(A)
(イ) (ロ)及び(ハ)以外の個室に対して適用する特別車両料金(A)
(略)
(ロ) 東日本旅客鉄道会社線内相互発着となる場合の特別車両料金(A)
(略)
(ハ) 九州旅客鉄道会社線内相互発着となる場合の特別車両料金(A)
a b以外の個室
(略)
営業キロ地帯 200キロメートルまで 400キロメートルまで 600キロメートルまで 601キロメートル以上 1室当りの料金
(設備定員2人)100,000円 102,000円 104,000円 106,000円 (b)DXスイート
営業キロ地帯 200キロメートルまで 400キロメートルまで 600キロメートルまで 601キロメートル以上 1室当りの料金
(設備定員3人)120,000円 122,000円 124,000円 126,000円
ななつ星in九州号が今後みどりの窓口等で一般旅客向けに発売されるとは考えられませんが、制度上料金は上記の通り定められています。ツアー料金の計算の根拠のために必要だったのでしょうか?
この列車は「豪華寝台列車」などと報じられており、また専用の77系客車が寝台車を意味する「ネ」を持つ形式(例:マイネフ77-7007)であることから寝台列車であるのは間違いないのですが、料金体系上は上記規則にあるとおり「個室の特別車両」であり「寝台」として扱われていません。理由はわかりません。車中泊を含む旅程ではあるのですが、何故なのでしょう。
ところで今までの特別車両料金の最高額は新幹線E5系はやぶさ号・はやて号・やまびこ号(一部除く)の701km以上のグランクラス10000円でした。
ななつ星in九州号は最も安いもの(スイート・200kmまで、100000円)でもその10倍となる大変に高額な料金体系です。
しかしながら、この個室料金最低10万円という料金は、本当に高額なのでしょうか?
例えばJR九州が発表しているDXスイートAを利用する3泊4日、2名1室のツアー料金は56万6000円です。ツアー料金は「列車の運賃、料金、専用バス代金、食事、エンターテイメント代金、観光施設料金」を含む(アルコール飲料を除く)とあります。
ツアー料金だけ見ても単純な列車利用の金額は見えてきませんので、実際に旅客営業規則により運賃・料金を計算してみます。
前述のとおり、旅客営業規則においてはこの列車は寝台列車ではありませんので、(1)運賃、(2)特急料金、(3)特別車両料金の合計金額となります。
3泊4日の場合の旅程は以下のとおりです。
各日「選べるプラン」というものが設定されており選択によっては列車の利用区間が異なってきますが、最大限ななつ星in九州号を利用する前提で考えてみます。
1日目:博多→由布院(列車泊)〜
2日目:〜宮崎→都城〜隼人
3日目:隼人〜鹿児島中央、鹿児島(列車泊)〜
4日目:〜阿蘇→豊後森→博多
このツアーは3日目の隼人〜鹿児島間、4日目の大分〜博多間で重複乗車となる区間が存在しています。また、3日目の鹿児島中央〜鹿児島間はバスで移動しており、乗車経路が連続していません。このため単純には運賃・料金とも計算できなさそうです。
そこで勝手に以下の解釈を加え、なんとか計算してみます。
「折り返しや不連続となる駅についても、運賃・料金計算を打ち切らず、営業キロ・運賃計算キロを通じて計算する」
鉄道利用として連続する区間・路線は以下のとおりです。
博多(鹿児島本線)久留米(久大本線)大分(日豊本線)鹿児島(鹿児島本線)鹿児島中央 営業キロ501.1km、運賃計算キロ524.3km
鹿児島(日豊本線)隼人(肥薩線)八代(鹿児島本線)熊本(豊肥本線)大分(久大本線)久留米(鹿児島本線)博多 営業キロ513.0km、運賃計算キロ554.4km
営業キロは1014.1km、運賃計算キロは1078.7kmです。
(1)運賃
規則第77条、77条の4、81条の4により運賃計算キロ1078.7kmは1041〜1080kmの間に含まれ、1060kmとなります。
300×17.75+300×12.85+460×7.05=5325+3855+3243=12423→12400円、5%を加えて13020円、2名で「26040円」です。
(2)特急料金
規則125条第1項第1号のロの(ホ)のaの(a)、旅客営業取扱基準規程第97条の2第1項第1号のコにより301km以上は2100円です。
特別車両利用時は500円を減じて1600円、2名で「3200円」です。
(3)特別車両料金
規則130条第1項第1号ロの(ハ)のbの(b)により601km以上の場合は「126000円」です。
2名での利用の場合、合計で26040+3200+126000=「15万5240円」となります。
3泊4日、2名でのツアー料金56万6000円の3割弱です。すなわち、ツアー料金のほとんどが車内の飲食、旅館の宿泊費、到着地での観光に充てられていることがわかります。
例えば2日目の霧島での宿泊先は「天空の森」です。一泊15万円とも20万円とも言われています。詳細は電話問い合わせのみの対応で、ウェブでは公開していません。
朝食と夕食は3回、昼食は4回で合計10回提供されます。ティータイムは最大3回です。
代金を計算するような物好きを対象としていない列車であることを承知のうえで言いますが、ななつ星in九州は実は大変お得な列車であると、今回計算して改めて思ったところです。
【旅客営業規則】
(幹線内相互発着の大人片道普通旅客運賃)
第77条 幹線内相互発着となる場合の大人片道普通旅客運賃は、次の各号により計算した額を合計した額とする。
ただし、北海道旅客鉄道会社線、四国旅客鉄道会社線又は九州旅客鉄道会社線内発又は着若しくは通過となる場合を除く。
(1) 発着区間の営業キロを次の営業キロに従つて区分し、これに各その営業キロに対する賃率を乗じた額を合計した額。この場合、発着区間の営業キロが100キロメートル以下のときは、10円未満の端数を10円単位に切り上げた額とし、100キロメートルを超えるときは、50円未満の端数を切り捨てて、又は50円以上の端数を切り上げてそれぞれ100円単位とした額とする。
(以下略)
(2) 前号の規定により計算した額に 100分の5を乗じ10円未満のは数を円位において四捨五入して10円単位とした額(以下この方法を「四捨五入」という。)
2 前項の規定によるほか、幹線内相互発着の大人片道普通旅客運賃は、次の各号に定める営業キロのものを適用する。
(1) 11キロメートルから50キロメートルまで
(略)
(2) 51キロメートルから100キロメートルまで
(略)
(3) 101キロメートルから600キロメートルまで 101キロメートルから20キロメートルごとに区分し、101キロメートルから120キロメートルまでは110キロメートルとし、121キロメートル以上は、これに1区分を増すごとに20キロメートルを加えた営業キロとする。
(4) 601キロメートル以上 601キロメートルから40キロメートルごとに区分し、601キロメートルから640キロメートルまでは620キロメートルとし、641キロメートル以上は、これに1区分を増すごとに40キロメートルを加えた営業キロとする。
(九州旅客鉄道会社内の幹線内相互発着の大人片道普通旅客運賃)
第77条の4 九州旅客鉄道会社内の幹線内相互発着となる場合の大人片道普通旅客運賃は、次の各号に定めるとおりとする。
(1) 営業キロが11キロメートルから100 キロメートルまでの場合
(略)
(2) 営業キロが100キロメートルを超える場合
発着区間の営業キロを次の営業キロに従つて区分し、各その営業キロに対する賃率により、第77条第1項並びに同条第2項第3号及び第4号の規定を適用して計算した額とする。
100キロメートルを超え、300キロメートル以下の営業キロ(第1地帯)/1キロメートルにつき 17円75銭
300キロメートルを超え、600キロメートル以下の営業キロ(第2地帯)/1キロメートルにつき 12円85銭
600キロメートルを超える営業キロ(第3地帯)/1キロメートルにつき 7円05銭
(九州旅客鉄道会社内の幹線と地方交通線を連続して乗車する場合の大人片道普通旅客運賃)
第81条の4 九州旅客鉄道会社内の幹線と地方交通線を連続して乗車する場合の大人片道普通旅客運賃は、発着区間の運賃計算キロにより、第77条の4に規定した額を適用する。
(大人急行料金)
第125条 大人急行料金は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)特別急行料金
イ 新幹線
(略)
ロ 新幹線以外の線区
(イ) (ロ)、(ハ)、(ニ)及び(ホ)以外の特別急行料金
(ロ) 第57条の3第2項の規定により発売する場合で(ハ)、(ニ)及び(ホ)以外の特別急行料金
(ハ) 第57条の3第2項の規定により発売する場合で、当該区間が東日本旅客鉄道会社線(ただし、別に定める場合を除く。)並びに海峡線、江差線中木古内・五稜郭間及び函館本線中五稜郭・函館間内相互発着となる場合の特別急行料金
(ニ) 第57条の3第2項の規定により発売する場合で、当該区間が西日本旅客鉄道会社線内相互発着となる場合の特別急行料金
(ホ) 第57条の3第2項の規定により発売する場合で、当該区間が九州旅客鉄道会社線内相互発着となる場合の特別急行料金
a b以外の特別急行料金
(a) 指定席特急料金
次表に定める料金とする。ただし、第57条の3第1項第1号の規定により発売するものにあっては、同表に定める料金から200円を、同条第3項の規定により発売するものにあっては、同表に定める料金から500円をそれぞれ低減した額とする。
営業キロ地帯 25キロ
メートルまで50キロ
メートルまで75キロ
メートルまで100キロ
メートルまで150キロ
メートルまで200キロ
メートルまで300キロ
メートルまで301キロ
メートル以上料金 800円 1,100円 1,300円 1,400円 1,700円 1,850円 1,950円 2,100円 (以下略)
(特別車両料金)
第130条 特別車両料金は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)特別車両料金(A)
イ ロ以外の特別車両料金(A)
(略)
(イ) (ロ)及び(ハ)以外の特別車両料金 (A)
(略)
(ロ)東日本旅客鉄道会社線内相互発着となる場合の特別車両料金(A)
a b、c及びd以外の特別車両料金 (A)
(略)
b グランクラスに対して適用する特別車両料金(A)
(a) (b)以外のグランクラスに対して適用する特別車両料金(A)
営業キロ地帯 100キロ
メートルまで200キロ
メートルまで300キロ
メートルまで400キロ
メートルまで500キロ
メートルまで600キロ
メートルまで700キロ
メートルまで701キロ
メートル以上料金 6,000円 7,000円 8,000円 9,000円 9,000円 9,000円 9,000円 10,000円 (b) なすの号等のグランクラスに対して適用する特別車両料金(A)
(略)c 特別急行列車「成田エクスプレス号」の特別車両に対して適用する特別車両料金(A)
(略)
d 別に定める特別急行列車の特別車両に対して適用する特別車両料金(A)
(略)(以下略)
【旅客営業取扱基準規程】
第97条の2 規則第57条の3第2項の規定による特別急行券の発売区間は、次の各号に定めるとおりとする。
(1) 次に掲げる線区又は区間に運転する特別急行列車の停車駅相互間とする。
(略)
コ 九州旅客鉄道会社内各線(以下略)