北千住から浅草への出札補充券

北千住発、浅草行きの連続乗車券です。
記事欄に北千住-大師前-浅草と記載があります。

この乗車券は、北千住から大師前と大師前から浅草への連続乗車券です。東武鉄道の場合、連続乗車券は補充券1枚で発売されます。
北千住〜大師前間160円と大師前〜浅草間240円の合算で400円が発売額となります。
二日間有効ですが、大師前を除いて下車ができるわけではないので、片道乗車券2枚とあまり差異はありません。

大師前は西新井駅から分岐する大師線で一駅の少々特殊な駅で、窓口も改札もありません。代わりに西新井駅には大師線の乗換自動改札機があります。
大師前へ行く場合、西新井駅の乗り換え改札で大師前までの乗車券を回収されます。ICカードは大師前までの運賃を差し引かれます。
大師前から西新井で乗り換える場合は乗車券類は購入せず、ICカードも入場状態でないまま乗車します。西新井駅大師線ホームの上、乗り換え改札の前にある券売機で西新井から着駅までの乗車券を購入します。ICカードは乗り換え改札で入場状態になります。

つまり大師線車内では、旅客は無札の状態が普通となります。
大師前駅に改札も券売機も無いことから、あらかじめ買っておく理由はあるかと思い購入しましたが、残念ながらどう考えても通常の乗車券かICカードを使うほうが合理的です。


裏面です。

JR線への連絡乗車券としても使用できることから、このような表記がしてあります。
特筆すべきは特定都区市内(発着駅が○○市内となるもの)を説明している(2)の記述内容です。

現在のJRの特定都区市内は11箇所あります。東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第86条で以下のとおり定められています(※図は省略)。

(特定都区市内にある駅に関連する片道普通旅客運賃の計算方)

第86条 次の各号の図に掲げる東京都区内、横浜市内(川崎駅、尻手駅八丁畷駅及び川崎新町駅並びに鶴見線各駅を含む。)、名古屋市内、京都市内、大阪市内(新加美駅を除く。)、神戸市内(道場駅を除く。)、広島市内(海田市駅及び向洋駅を含む。)、北九州市内、福岡市内(姪浜駅下山門駅今宿駅九大学研都市駅及び周船寺駅を除く。)、仙台市内又は札幌市内(以下これらを「特定都区市内」という。)にある駅と、当該各号に掲げる当該特定都区市内の◎印の駅(以下「中心駅」という。)から片道の営業キロが 200キロメートルを超える区間内にある駅との相互間の片道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する。
ただし、特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を通過するとき、又は特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るときを除く。

(1)東京都区内
(2)横浜市
(3)名古屋市
(4)京都市
(5)大阪市
(6)神戸市内
(7)広島市
(8)北九州市
(9)福岡市内
(10)仙台市
(11)札幌市内

上記条文との違いを列挙してみます。

  1. 「札幌市内」が含まれていません。
  2. 大阪市内」から新加美駅を除くという記述がありません。
  3. 北九州市内」から香月駅が除かれています。
  4. 「福岡市内」から除かれる駅が全て記載されていません。

券面の記述と現行の制度との差異から、この補充券はかなり古い様式のものであると思われます。

順に検証してみます。

  1. 特定都区市内制度に「札幌市内」が追加されたのは、1972年です。仙台、広島、北九州、福岡と共に追加されました。券面に記載されていないのは、東武鉄道から北海道方面への連絡運輸が無かったためと思われます。
  2. 新加美駅は、2008年に開業したおおさか東線の駅です。新しい駅であるため追加されていないのでしょう。所在地は大阪府大阪市ですが、両隣が東大阪市・八尾市であり市外を経由しないと到達できません。このため大阪市内の駅からは除かれています。
  3. 香月駅は、国鉄香月線にかつて存在した駅です。1985年の香月線廃止にあわせ駅も廃止されました。駅所在地は福岡県北九州市ですが、両隣の駅が中間市遠賀郡水巻町と市外を経由しないと到達できないため、北九州市内の駅からは除かれていました。
  4. 福岡市内からは姪浜、下山門、今宿、九大学研都市周船寺が除かれています。かつては筑肥線として博多駅から直通列車が運転されており、福岡市内の駅に含まれていましたが、1983年に博多〜姪浜間が筑肥線としては廃止され、同区間福岡市地下鉄空港線と直通運転を開始しました。JRの路線のみで福岡市内を経由して到達できないことから、姪浜以遠の駅で所在地が福岡県福岡市ある各駅は福岡市内の駅から除かれています。

以上を勘案すると、筑肥線一部廃止となる1983年以前に作成された補充券であると推測されます。
おそらく30年以上前のものでしょう。なかなか感慨深いものがあります。


※上記のように書きましたが、コメント欄でご指摘いただいたとおり、「旅客鉄道会社」の印字があり国鉄時代に作成されたものではありません。
よって作成時期を推定した箇所は撤回します。なお本文は訂正しません。