布施から河内永和への片道乗車券

布施から河内永和への片道乗車券です。


奈良線で隣の駅までの乗車券で営業キロ0.8km、運賃は150円です。以下、奈良線経由と呼称します。


近畿日本鉄道は布施〜大和八木〜大和西大寺〜布施で環状線一周となる経路が存在します。環状線内発着または通過となる乗車券については、最短経路で運賃計算し他経路(生駒線・田原本線経由は不可)での乗車が認められています。

ただし、上記サイトに「ご指定のない限り距離の短い経路で運賃を計算します。」とあるとおり、最短経路での乗車券の発売を強制するものではありません。
近畿日本鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)においても第27条(普通乗車券の発売)、第64条(大人片道普通旅客運賃)で環状線部分を最短経路とするという規定は存在しません。第100条(環状経路内の他経路乗車)で、発売された乗車券の効力として環状線の他経路乗車を認めるとのみ定められています。
JR旅客営業規則の大都市近郊区間の考え方に近く、乗車券は乗車経路通りに発売するのを原則としつつ、環状線発着または通過の場合においては発売された経路(=最短経路とは限らない)と異なる経路での乗車を認めています。もちろん通常は安い方の経路での発売以外は考えられません。近鉄は改札外乗り換えとなる駅を除き、普通乗車券での途中下車を廃止しています(規則第99条※)。遠回りの乗車券を購入したところで途中下車ができない以上、意味はありません。
※旅客営業規則では第99条で田原本・西田原本間、王寺・新王寺間の徒歩等連絡時は途中下車可としていますが、きっぷのご案内ページでは「生駒鋼索線 宝山寺駅」以外は不可と記載しています。規則と説明のページが一致していない状態となっています。


布施から河内永和への片道乗車券です。

この乗車券の経路は布施(大阪線)大和八木(橿原線)大和西大寺(奈良線)河内永和です。以下、八・西経由と呼称します。
上記規定に従い、遠回りの経路で乗車経路どおりに発売されました。「八・西経由」という独特の表記が特徴です。それぞれ「大和八木」と「大和西大寺」を意味します。営業キロ72.7km、運賃は1070円です。
近鉄ASKA端末は乗車券発売画面上に経路指定ボタンがあり、これを押下することで乗車券の経路を指定できます。



同じく、布施から河内永和への片道乗車券です。

この乗車券の経路は布施(大阪線)大和八木(橿原線)田原本・西田原本(田原本線)新王寺・王寺(生駒線)生駒(奈良線)河内永和です。環状線の内側にあたる田原本線生駒線を経由しており「八・田・生経由」と印字されています。「大和八木」「田原本」「生駒」経由を表します。営業キロ71.2km、運賃は八・西経由と同じ1070円です。以下、八・田・生経由と呼称します。



布施から河内永和への近鉄線完結の片道乗車券として考えられるのはこの3通りで、いずれの乗車券も規定上は正当な発売ということになります。
一方で効力についてですが、奈良線経由八・西経由の乗車券についてはどちらも規則第100条第1項に定める「環状経路(布施〜大和八木〜大和西大寺〜布施)を部分乗車となる乗車券で、同経路を発または着もしくは一部通過となる普通乗車券」です。従って券面経路にかかわらず、他の経路で乗車することが認められています。
しかしながら、同条但し書きにより奈良線経由八・西経由とも田原本線生駒線経由での乗車、つまり八・田・生経由の経路で乗車はできず、同条第2項の規定による区間変更として扱われます(※)。
奈良線経由から八・田・生経由へ変更する場合は原券150円と八・田・生経由1070円の差額920円、八・西経由から八・田・生経由へ変更する場合は同額のため差額なしで変更可能と思われます。

一方で、八・田・生経由の乗車券は規則第100条が定める「環状経路(布施〜大和八木〜大和西大寺〜布施)を部分乗車となる乗車券で、同経路を発または着もしくは一部通過となる普通乗車券」に該当します。
しかしながら他経路乗車が認められているのは「環状経路内の乗車区間をその運賃計算経路と異なる他の経路(生駒線田原本線は除く。)により乗車」する場合に限られます。笠縫・生駒間を橿原線田原本線生駒線経由の乗車券で、橿原線奈良線で他経路乗車として利用することは出来ず、八・田・生経由の乗車券でも八・西経由での利用は不可で区間変更が必要ということになります。

このことは乗換案内サイトにも反映されており、例えば瓢箪山・大和八木間の利用で、奈良線・大和西大寺・橿原線経由の場合は620円奈良線・生駒・生駒線・王寺・新王寺・田原本線・西田原本・田原本・橿原線経由の場合は560円と運賃が異なっています。生駒線田原本線経由の乗車券で他経路乗車が認められるなら、どちらも安価な560円が表示されるはずです(※)。
近畿日本鉄道公式サイトでの運賃・料金検索で調べたかったのですが、経由駅を指定できないため生駒線田原本線経由と奈良線橿原線経由の運賃比較がうまくできませんでした。

なお、布施→河内永和においては奈良線経由八・西経由もどちらも150円が回答されます。少なくともヤフー(及び情報提供元のヴァル研究所、交通新聞社)生駒線田原本線経由の乗車券で奈良線橿原線経由の他経路乗車は不可としているといえます。

(普通乗車券の発売)
第27条 普通乗車券は、次の各号によって発売する。
1 片道乗車券
旅客が、普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車(以下「片道乗車」という。)する場合に発売する。但し、その経路が折返しとなる場合又は環状線を1周し更にこれを越える場合を除く。
(以下略)

(大人片道普通旅客運賃)
第64条 鉄道線の大人片道普通旅客運賃は、別表第4号に定めるとおりとする。
(以下略)

(途中下車)
第99条 旅客は旅行開始後、その所持する乗車券によって、その券面に表示された発着区間内の着駅以外の駅に下車して出場した後、再び列車に乗り継いで旅行することができない。但し、次の各号に定める駅を除く。
(1) 次に掲げる駅間を徒歩等任意の旅行として、一方の駅で下車した後、再び他方の駅から乗車する場合は、その下車駅
 イ 田原本と西田原本
 ロ 王寺と新王寺
(2) 定期乗車券を使用する場合は、その券面に表示された経路の発着区間内の任意の駅
(3) 社が特に途中下車のできる駅を指定した場合は、その指定した駅

(環状経路内の他経路乗車)
第100条 環状経路(布施〜大和八木〜大和西大寺〜布施)を部分乗車となる乗車券で、同経路を発または着もしくは一部通過となる普通乗車券又は回数乗車券を所持する旅客は、旅行開始後、環状経路内の乗車区間をその運賃計算経路と異なる他の経路(生駒線田原本線は除く。)により乗車することができる。
2 前項の規定により旅客が他の経路を乗車中に、途中駅において下車したとき及び途中駅から環状経路以外の駅へ乗車したときは、区間変更として取り扱う。