環状線を一周する連絡乗車券

代々木から代々木上原と、代々木上原から新宿への連続乗車券です。

連続1は代々木(山手線)新宿(小田原線)代々木上原、連続2は代々木上原(小田原線)新宿(山手線)品川(東海道新幹線)東京(東北本線)田端(山手線)新宿です。


連続1はJR線→小田急線、連続2は小田急線→JR線、どちらも連絡乗車券です。
連続2は代々木上原から新宿と、区間だけ見ると小田急線完結のようにも見えますがJR線部分は新宿→新宿と山手線を一周しています。

連絡乗車券で環状線を一周する経路のものを発売できるかどうかについてですが、東日本旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則(以下、連規)第16条第1号では片道乗車券の発売条件を定めています。片道乗車券として発売できるものは、東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第68条第4項に定められるJR線の営業キロ等を打ち切る駅までとあります。
連続2の区間小田急線が代々木上原→新宿、JR線が新宿→新宿です。新宿でJR線区間環状線一周となりますので、新宿までは発売可能です。新宿より先の駅(大久保方面・代々木方面)への乗車券は発売できません。

なおこの経路の逆となるもの(新宿→代々木上原、経由:東北・東京・新幹線・品川・中央東・新宿)は、新宿に到達したところでJR線が環状線一周となるため片道乗車券の発売要件を満たさなくなり発売できません。


このような環状線一周を含む連絡乗車券の発売について考えてみます。
JR線・会社線とも環状線一周を超えると営業キロを打ち切るのが一般的です。すなわち連絡乗車券で環状線一周を含むには、環状線一周したところで経路を終了させる必要があります。

会社線環状線があるところは、例えば東京急行電鉄西武鉄道などがありますが、東日本旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸取扱基準規定別表(以下、連基別表)においては接続駅から接続駅への運賃(例 渋谷接続の東急線渋谷)は定めが無く、連規第14条の注1に定める「会社線区間は連基別表で運賃計算ができる場合に限り発売」に反することとなります。
従って会社線環状線一周となる経路のもの(例 JR線原宿→渋谷接続→東急線渋谷)については発売ができません。

では会社線側の駅において、社→JRの連絡乗車券でJR部分が環状線となる経路のものを発売できるかですが、まず社線側でJR連絡の連続乗車券を発売できるかどうかが不明なところがほとんどでしょう。また仮に規定上発売可能であっても会社線においては接続駅からJR線着駅への最短経路の運賃表しか設備していない場合が多く、環状線一周のJR線運賃計算が困難であることから実際は発売しないものと思われます。

以上のことから、環状線一周を含む連絡乗車券は、
(1)連続乗車券を発売できる会社線で、
(2)接続駅がJR側の連絡範囲に含まれており、
(3)連続1がJR→社、連続2が社→JRの形態で、
(4)連続2のJR部分が環状線一周となるものを、
(5)JRの駅で発売する場合、
に限り発売可能と考えられます。


新宿を接続駅とするJR東日本小田急電鉄の連絡範囲は以下のとおりです。
JR東日本東海道本線、山手線、赤羽線南武線鶴見線武蔵野線横浜線根岸線横須賀線、相模線、伊東線中央本線 東京〜塩山間、東北本線 東京〜宇都宮間・尾久・北赤羽〜北与野間、常磐線 日暮里〜友部間、高崎線総武本線 東京〜八日市場間・秋葉原錦糸町間、京葉線外房線 千葉〜蘇我間、成田線 佐倉〜成田間、成田〜成田空港間
小田急電鉄小田原線江ノ島線

【旅客連絡運輸規則】
(乗車券類の発売範囲)
第14条 乗車券類を発売する範囲は、別表に定めるとおりとする。
(中略)
(注1)連続乗車券は、各区間ごとの発着駅が連絡運輸区域内にあり、かつ、連絡会社線区間については、規程別表に示されている連絡会社線旅客運賃に基づいて運賃計算ができる場合に限って発売する。
(以下略)

(普通乗車券の発売)
第16条 旅客が列車等に乗車船する場合は、次の各号に定めるところにより、片道乗車券、往復乗車券又は連続乗車券を発売する。
(1)片道乗車券
普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車船(以下「片道乗車」という。)する場合に発売する。ただし、旅客規則第68条第4項の規定により営業キロ擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する場合は、当該打切りとなる駅までの区間のものに限り発売する。
(2)往復乗車券
往路又は復路とも片道乗車券を発売できる区間であって、往路と復路の区間及び経路が同じ区間を往復1回乗車船(以下「往復乗車」という。)する場合に発売する。
ただし、往路と復路の経路が異なる場合であっても、その異なる経路が旅客規則第16条の3に掲げる左欄及び右欄の経路相互である場合は往復乗車券を発売する。
(3)連続乗車券
前各号の乗車券を発売できない連続した区間(当該区間が2区間までのものに限る。)をそれぞれ1回乗車船(以下「連続乗車」という。)する場合に発売する。

【旅客営業規則】
(旅客運賃・料金計算上の営業キロ等の計算方)
第68条 営業キロ又は擬制キロを使用して旅客運賃を計算する場合は、別に定める場合を除いて、次の各号により営業キロ又は擬制キロを通算して計算する。
(1)営業キロ又は擬制キロは、同ー方向に連続する場合に限り、これを通算する。
(2)当社と通過連絡運輸を行う鉄道・軌道・航路又は自動車線が中間に介在する場合、これを通じて連絡乗車券を発売するときは、前後の旅客会社の区間営業キロ又は擬制キロを通算する。
2 (略)
3 (略)
4 前各項の規定により、旅客運賃・料金を計算する場合で次の各号の1に該当するときは、当該各号に定めるところによつて計算する。
(1)計算経路が環状線1周となる場合は、環状線1周となる駅の前後の区間営業キロ擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する。
(2)計算経路の一部若しくは全部が復乗となる場合は、折返しとなる駅の前後の区間営業キロ擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切つて計算する。
(3)新下関・博多間の新幹線の一部又は全部と同区間山陽本線及び鹿児島本線の一部又は全部とを相互に直接乗り継ぐ場合は、次により計算する。
ア 山陽本線新下関・門司間及び鹿児島本線中門司・小倉間の一部又は全部(同区間と同区間以外の区間をまたがる場合を含む。)と山陽本線(新幹線)中新下関・小倉間(同区間と同区間以外の区間をまたがる場合を含む。)とを新下関又は小倉で相互に直接乗り継ぐ場合は、新下関又は小倉で営業キロ又は運賃計算キロを打ち切つて計算する。
イ 鹿児島本線中小倉・博多間の一部又は全部(同区間と同区間以外の区間をまたがる場合を含む。)と鹿児島本線(新幹線)中小倉・博多間(同区間と同区間以外の区間をまたがる場合を含む。)とを小倉又は博多で相互に直接乗り継ぐ場合、小倉又は博多で営業キロ又は運賃計算キロを打ち切つて計算する。
(注)東海道本線中金山・名古屋間と中央本線中金山・名古屋間とは同一の線路である。