相生・天王寺間の途中下車可否(マルス券・車内補充券)

相生から天王寺の片道乗車券です。


経由は「相生・新幹線・新大阪・東海・大阪環・京橋」です。相生・新大阪間で新幹線を利用する経路をJR東日本えきねっとの乗車券メニューで申し込みました。
この乗車券の経路は相生(山陽新幹線)新大阪(東海道本線)大阪(大阪環状線・鶴橋経由※)天王寺です。営業キロは126.9km、大都市近郊区間に含まれない山陽新幹線西明石・新大阪間を経由していますので2日間有効で途中下車も可となります。発売額は営業キロ121〜140kmに相当する2270円です。
※大阪・天王寺間は、東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第69条第1項第7号に規定される経路特定区間で、短い方の鶴橋経由で運賃・料金が計算されます(京橋・鶴橋経由10.7km、西九条・弁天町経由11.0km)。


相生から天王寺の片道乗車券です。上記と同じ経路を指定席券売機で申し込むと、以下の乗車券が発券されます。


経由は「相生・新幹線・西明石・山陽・東海・大阪環・京橋」です。確認画面で表示される経路は上記2270円の乗車券と同じものであっても相生(山陽新幹線)西明石(山陽本線)神戸(東海道本線)大阪(大阪環状線・鶴橋経由)天王寺の経路で発券されました。営業キロ119.3kmで運賃は1940円と新大阪経由のものより安価です。
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第157条第1項第29号に規定される大阪・西明石間の選択乗車をあらかじめ適用させ、短い方の在来線経由とすることで安い方の運賃で発売し、効力として新幹線・新大阪経由でも利用できるよう発券されました。
おそらく指定席券売機は、西明石・大阪間で新幹線を経由する経路は自動的に在来線経由に置き換えているのでしょう。

ただし安価な経路で発売した結果、途中下車ができなくなっています。
大阪近郊区間東京近郊区間と異なり一部の新幹線も近郊区間に含まれます。山陽新幹線西明石・相生間は大都市近郊区間に含まれるのでこの乗車券は新幹線経由であっても大都市近郊区間内相互発着の乗車券となり、営業キロによらず1日間有効・下車前途無効となります。
従って、指定席券売機では相生→天王寺間(大阪・環状線経由)で途中下車できる乗車券は発売できないことになります。


相生から新幹線を新大阪まで利用し大阪から環状線天王寺に向かう乗車券は上記2種類の何れか、すなわち途中下車できるが高いまたは安いが下車前途無効のどちらかということになります。
(1)実乗車経路通りの新幹線・新大阪・大阪・環状線経由で発売。途中下車可能、ただし運賃は高い2270円。
または、
(2)相生から在来線で大阪(または相生・西明石間新幹線利用)、大阪から環状線経由で天王寺。在来線経由の乗車券でも相生・新大阪間で新幹線利用可。運賃は1940円で安いが下車前途無効



ところが、以下の様な現象も発生します。

相生から天王寺への片道乗車券です。
JR西日本の車内補充券発行機により発売されました。


運賃は上記で「安い」とした101〜120kmに該当する1940円ですが、有効日数は2日間で下車前途無効の印字もなく途中下車可となっています。安い方の運賃で、かつ途中下車できる乗車券として発売されました。

この乗車券はどのような運賃計算経路で発売されたのでしょうか。
相生・天王寺間で2日間有効・途中下車可の乗車券とするには、片道100kmを超え、かつ大都市近郊区間外である山陽新幹線新大阪・西明石間を経由する必要がありますが、相生(山陽新幹線)新大阪(東海道本線)大阪(大阪環状線・鶴橋経由)天王寺は前述のとおり営業キロ126.9km、運賃は2270円で1940円にはなりません。

経由を見ると「相生・新幹線」で終わっています。新幹線の着駅が印字されていないのは西日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程第151条の規定により分岐駅通過列車による区間外乗車(神田通過・東京折り返し、金山通過・名古屋折り返し等)の場合に見られます。
大阪を通過する急行列車(山陽新幹線)から大阪で分岐する線区(大阪環状線)への乗継であるため、大阪・新大阪の区間外乗車が適用された結果なのでしょうか。
しかしながら、規則第16条の2第2項第4号においては新大阪・西明石間(両端駅を除く)を発着または接続駅とする場合、新幹線と在来線は別の線路として扱うと定めています。今回は新大阪・西明石間の駅である大阪を大阪環状線への接続駅としていますので、新幹線と在来線は別の路線として扱われることとなります。新幹線単独駅のない東京・上野間、三河安城・名古屋間とは事情が異なるように思われます。

大阪・新大阪間の区間外乗車の規定は、新大阪(以遠)発着で梅田貨物線経由の阪和線方面の特急列車くろしお、はるか等が(扱い上は)大阪駅を通過するための措置と考えられ、たとえばはるか号で天王寺→(梅田貨物線経由・大阪通過)→新大阪→大阪→塚本(以遠)と利用する際、大阪・新大阪間が複乗となりますが天王寺→大阪→塚本(以遠)の乗車券で利用できるようにするためと考えます。新幹線が大阪駅を通過することを見越した規定ではないように思われます。


この車内補充券発行機による乗車券と同じ区間で同じ効力・運賃の乗車券はマルスシステムでは発券できないようです。1940円・2日・途中下車可のものを発券できるのは車内補充券発行機だけなのかもしれません。マルスシステムが非対応であれば出札補充券での発券も考えられますが、この乗車券はどういう根拠・経路で発売されたのか結局のところは不明です。
山陽新幹線新大阪・西明石間の東海道本線大阪駅と同じ営業キロの位置に新幹線大阪駅(大阪環状線分岐駅)が存在するとみなし、新幹線大阪駅を通過することで大阪経由・大阪環状線方面の乗車券で新幹線大阪・新大阪間の区間外乗車を認める、というものなのでしょうか?それであれば車発機だけしか対応していないのは不自然です。

【旅客営業規則】
(選択乗車)
第157条 旅客は、次の各号に掲げる各駅相互間(略図中の〓線区間以遠の駅と━線区間以遠の駅若しくは◎印駅相互間)を、普通乗車券又は普通回数乗車券(いずれも併用となるものを含む。)によつて旅行する場合は、その所持する乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、各号の末尾に記載した同一かつこ内の区間又は経路のいずれか一方を選択して乗車することができる。ただし、2枚以上の普通乗車券又は普通回数乗車券を併用して使用する場合は、他方の経路の乗車中においては途中下車をすることができない。
(1)〜(28)略
(29)大阪以遠(天満又は福島方面)の各駅と、西明石以遠(大久保方面)の各駅との相互間(東海道本線及び山陽本線経由、新幹線経由)。この場合、乗車券の券面に表示された経路以外の区間内では途中下車の取扱いをしない。
(以下略)

【旅客営業取扱基準規程】
(分岐駅通過列車に対する区間外乗車の取扱いの特例)
第151条 次に掲げる区間の左方の駅を通過する急行列車へ同駅から分岐する線区から乗り継ぐ(急行列車から普通列車への乗継ぎを含む。)ため、同区間を乗車する旅客(定期乗車券を所持する旅客を除く。)に対しては、当該区間内において途中下車をしない限り、別に旅客運賃を収受しないで、当該区間について乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。
(中略)
大阪・新大阪間
(以下略)