別線往復+通過連絡の乗車券

広島市内〜筑前前原の往復乗車券です。JR西日本の出札補充券により発売されました。


この乗車券の経路は以下のとおりです。

往路:広島(山陽本線)門司(鹿児島本線)博多(空港線)姪浜(筑肥線)筑前前原
復路:筑前前原(筑肥線)姪浜(空港線)博多(山陽新幹線)広島

博多・姪浜間で福岡市高速鉄道線を経由する通過連絡の乗車券です。広島・博多間を往路は在来線、復路は新幹線を利用しています。


往復乗車券は往路と復路で経路が同じであることが発売条件(※1)です。
新下関・博多間は新幹線と在来線を同一扱いせず(※2)異なる路線となり、運賃も異なっていますが往復乗車券の発売は可能であると定められています(※1)。
※1 東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第16条の3、規則第26条第2号、連絡乗車券の場合は東日本旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則(以下、連規)第16条第2号
※2 規則第16条の2第1項

従って、新下関・博多間を往路と復路で異なる路線である在来線と新幹線を経由する乗車券は往復乗車券として発売可能であり、このような場合は別線往復乗車券というものが発売されるのですが、マルスシステムの仕様上、別線往復かつ通過連絡となる経路は運賃計算ができないようです。

このような場合は、以下の様な方法が考えられます。
(1)往復乗車券ではなく、片道2枚(往路分と復路分)で発売する。
(2)安価である山陽新幹線経由の往復で発売し、使用開始後に経路を変更する。
(3)出札補充券で発売する。

(1)は一番簡単ですが有効日数が片道ずつとなってしまいます。(2)は往復の有効日数となりますが区間変更が必要です。(3)は一番真っ当なやり方ではありますが、すぐの発券は難しく、自動改札も利用できません。今回は(3)となりました。


運賃・営業キロは以下のとおりです。
福岡市高速鉄道:9.89.7km 290円(当時の運賃。以下同)
JR線往路:JR西日本 広島〜下関 201.7km(運賃計算キロ206.1km)、JR九州(1) 下関〜博多 79.0km、JR九州(2) 姪浜筑前前原 12.7km
 合計運賃計算キロ297.8kmに該当する運賃4940円に、JR九州区間91.7kmの加算運賃150円、福岡市高速鉄道290円を合算し5380円
JR線復路:JR九州 筑前前原〜姪浜 12.7km、JR西日本 280.7km(運賃計算キロ285.1km)
 合計運賃計算キロ297.8kmに該当する運賃4940円に、JR九州区間12.7kmの加算運賃40円、福岡市高速鉄道290円を合算し5270円

往路と復路を合算し10650円が発売額です。合計営業キロは303.2303.1kmですので片道3日間有効、往復乗車券で6日間有効となります。
事由は3(新在往)、4(新在復)となるところではありますが、事由欄に「別線往復(ゆき)」「別線往復(かえり)」と記入されました。

なお、福岡市高速鉄道は2日以上有効となるJR線連絡乗車券であっても、高速鉄道線内での途中下車を不可としています。
今回の乗車券の往路の場合、広島市内各駅と高速鉄道線内博多・姪浜間は途中下車できず、それ以外の区間では途中下車可ということになります。

有効日数については福岡市高速鉄道連絡運輸規程(以下、連絡規程)第19条第1項第1号でJR線と同じ日数を定めています。一方で高速鉄道線内で途中下車できないことは、連絡規程における乗車券の効力に定めがありません。ただし連絡規程第35条第1項において、JR線連絡について連絡規程に定めのない事項は一部を除き福岡市高速鉄道乗車料金等条例施行規程(以下、施行規程)を準用すると定めており、施行規程第42条第6項では定期券・一日券と天神駅天神南駅での乗継の場合を除き途中下車できないと定めています。これがJR線の長距離連絡乗車券であっても高速鉄道線内で途中下車できない根拠となるのでしょうか。
なお、連規第76条第5号では運輸機関が特に指定した駅では途中下車できないと定めていますので、社線内の駅のみ途中下車不可という取り扱い自体は正当なものということになります。

かつては片道普通乗車券の様式を定めた運輸規程第22条第2項第2号「西日本旅客会社山陽本線(下関駅を除く。)及び東海道本線,東海旅客会社東海道本線並びに東日本旅客会社東海道本線に係る連絡運輸区域(以下「西日本旅客会社等に係る連絡運輸区域」という。)」において準常備式連絡乗車券の様式例が示され、裏面に「地下鉄1号線内途中下車禁止」と記載されていました。
平成26年4月にJR線との連絡運輸が見直され博多接続は通過連絡のみの扱いとなったことから、姪浜発着の博多接続JR線連絡乗車券は不要となり、規程改定により様式から削除されました。過去に発売されていた実績は果たしてあったのかどうか……。


この乗車券を購入した当時の連絡範囲は以下のとおりでした。
姪浜接続】
 JR九州筑肥線 唐津・下山門間、唐津線 西唐津
 福岡市高速鉄道:各駅(空港線以外の路線も含む)

【博多接続】
 JR東日本東海道本線 東京(都区内)
 JR東海東海道本線 東京・名古屋(市内)・京都
 JR西日本東海道本線 京都(市内)・大阪(市内)・神戸(市内)、山陽本線 岡山・広島(市内)・小倉
 JR九州山陽本線 下関、鹿児島本線 門司港〜久留米間、香椎線篠栗線筑豊本線 直方〜筑前山家間
 福岡市高速鉄道姪浜

【通過連絡運輸】
福岡市高速鉄道空港線 博多・姪浜間を経由し、
JR線
 JR東日本東海道本線 東京(都区内)、JR東海東海道本線 東京・名古屋(市内)・京都、
 JR西日本東海道本線 京都(市内)・大阪(市内)・神戸(市内)、山陽本線 岡山・広島(市内)・小倉、JR九州:各駅
と、
JR九州筑肥線唐津線
の相互間


現在の連絡範囲は以下のとおりです。

福岡市高速鉄道線を経由する現在のJR線の通過連絡範囲は以下のとおりです。
姪浜接続】
 JR九州筑肥線 唐津・下山門間、唐津線 西唐津
 福岡市高速鉄道:各駅(空港線以外の路線も含む)

【通過連絡運輸】
福岡市高速鉄道空港線 博多・姪浜間を経由し、JR東海JR西日本JR四国JR九州の各駅と、JR九州 筑肥線唐津線の相互間


JR東日本との連絡運輸は廃止されると共に博多接続は通過連絡運輸限定となった一方で、新たにJR四国との連絡運輸を行うようになりJR東海JR西日本の連絡範囲は各駅に拡大されています。
※福岡市高速鉄道連絡運輸規程 別表第1第2項の規定による


【旅客営業規則】
(新幹線と新幹線以外の線区の取扱いの特例)
第16条の3 次の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区に関し、第26条第1号ただし書、第2号ただし書及び第3号にそれぞれ規定する普通乗車券の発売、第68条第4項に規定する旅客運賃計算上の営業キロ等の計算方並びに第242条第2項に規定する区間変更の取扱いにおける旅客運賃・料金の通算方又は打切方については、前条第1項の規定を準用する。
山陽本線新下関・門司間及び鹿児島本線中門司・博多間/山陽本線(新幹線)中新下関・小倉間及び鹿児島本線(新幹線)中小倉・博多間

(普通乗車券の発売)
第26条 旅客が、列車に乗車する場合は、次の各号に定めるところにより、片道乗車券、往復乗車券又は連続乗車券を発売する。
(1)略
(2)往復乗車券
 往路又は復路とも片道乗車券を発売できる区間であつて、往路と復路の区間及び経路が同じ区間を往復1回乗車(以下「往復乗車」という。)する場合に発売する。ただし、往路と復路の経路が異なる場合であつても、その異なる経路が第16条の3に掲げる左欄及び右欄の経路相互である場合は往復乗車券を発売する。
(以下略)

【旅客連絡運輸規則】
(普通乗車券の発売)
第16条 旅客が列車等に乗車船する場合は、次の各号に定めるところにより、片道乗車券、往復乗車券又は連続乗車券を発売する。
(1)略
(2)往復乗車券
 往路又は復路とも片道乗車券を発売できる区間であって、往路と復路の区間及び経路が同じ区間を往復1回乗車船(以下「往復乗車」という。)する場合に発売する。ただし、往路と復路の経路が異なる場合であっても、その異なる経路が旅客規則第16条の3に掲げる左欄及び右欄の経路相互である場合は往復乗車券を発売する。
(以下略)

【福岡市高速鉄道乗車料金等条例施行規程】
(乗車券の効力)
第42条 普通券は,発売当日に限り,大人又は小児の区分に従つて,1券片をもつて1人が1回に限り,当該普通券を発売した駅から券面表示区間内を乗車する場合に使用することができる。
2〜5 略
6 乗車券(定期券及び1日券を除く。)は,券面表示区間内の途中の駅で下車して出場したときは,前途無効とする。ただし,乗継ぎ(天神駅及び天神南駅の一方の駅で改札を受けて出場してから2時間以内に他方の駅で改札を受けて入場する場合をいう。以下同じ。)を行う場合は,この限りでない。

【福岡市高速鉄道連絡運輸規程】
(乗車券の通用期間)
第19条 乗車券の通用期間は,別に定めるもののほか,次の各号に定めるとおりとする。
(1) 片道普通券 片道普通券の当該区間営業キロ程が100キロメートル以内である場合は1日,100キロメートルを超えて200キロメートル以内である場合は2日とし,200キロメートルを超える場合には,当該超える営業キロ程200キロメートルにつき1日を加算した日数とする。
(以下略)

(施行規程の準用)
第35条 旅客会社との連絡運輸の取扱いに関し,この規程に定めのないものについては,施行規程(第44条第4項の規定を除く。)を準用する。この場合において,施行規程第48条第1項第3号中「券面表示事項が不明となつた乗車券又は裏面磁気情報にき損を生じた乗車券を使用したとき」とあるのは「券面表示事項が不明となつた乗車券を使用したとき」と,施行規程第49条第1項第2号中「券面表示事項が不明となつた定期券及び裏面磁気情報にき損を生じた定期券を使用したとき」とあるのは「券面表示事項が不明となつた定期券を使用したとき」と,施行規程第72条第2項,施行規程第76条第1項及び施行規程第77条第2項中「手数料200円」とあるのは「手数料220円」と,施行規程第74条第4項第1号中「200円」とあるのは「220円」と,施行規程第79条中「,既に収受した料金から当該乗客が乗車した区間に相当する料金を差し引いた額の払戻し」とあるのは「,乗車中止駅と乗車券の券面に表示された着駅との区間に相当する料金の額の払戻し」と,施行規程第80条第2項第2号中「既に収受した料金から乗車券の券面に表示された発駅とその途中駅との区間に相当する料金を差し引いた残額」とあるのは「途中駅と乗車券の券面に表示された着駅との区間に相当する料金の額」と読み替えるものとする。
(以下略)

別表第1
1 高速鉄道及び社の発売する乗車券による連絡運輸
(1)相互連絡(接続駅が姪浜の場合)

連絡運輸区域乗車券の種別
高速鉄道接続駅社線
1号線 室見・福岡空港間各駅
2号線 呉服町・貝塚間各駅
3号線 渡辺通・橋本間各駅
姪浜九州旅客会社
 筑肥線下山門・唐津間各駅
 唐津線西唐津駅
片道乗車券
定期券
団体券
乗継乗車券(天神南駅に限り発行する)
(中略)
2 社の発売する乗車券による連絡運輸
連絡運輸区域乗車券の種別
社線高速鉄道通過区域社線
接続駅線名接続駅
九州旅客会社
 筑肥線各駅
 唐津線西唐津・小城間各駅
姪浜1号線博多九州旅客会社
 各駅
四国旅客鉄道
 各駅
西日本旅客鉄道
 各駅
東海旅客鉄道
 各駅
片道乗車券
往復乗車券
定期券
(乗車区間が100キロメートル以内の場合に限る。)
団体券