経路数上限の乗車券

先日、経路数が多い乗車券は120mmの長い乗車券で発券されるとご紹介しました。11経路を超えると磁気情報が入りきらなくなるため長い乗車券となります。
マルスシステムでは16経路まで指定可能です。これを超えるとマルスシステムでの発券自体ができないため、補充券による発売となります。
JR東日本みどりの窓口に設置されているPOS端末では20経路まで指定可能ですので、運賃をPOSシステムで調べて補充券へ転記するという手法を採るところもあるようです。21経路以上の場合は運賃の計算が必要となり、おそらく即時の発券は不可能でしょう。


16経路となるとかなり長距離の乗車券となりそうですが、ルートによっては意外と近距離の乗車券でも可能です。
西立川発、秋葉原行きの片道乗車券です。

経路は以下のとおりです。
西立川(1.青梅線)立川(2.中央本線)西国分寺(3.武蔵野線)府中本町(4.南武線)川崎(5.東海道本線)東神奈川(6.横浜線)7.新横浜乗換(8.東海道新幹線)9.東京乗換(10.東北本線)神田(11.中央本線)新宿(12.山手線2)池袋(13.赤羽線)赤羽(14.東北本線2)田端(15.山手線2)日暮里(16.東北本線)秋葉原

以上新幹線乗換を含め16路線、営業キロ113.9kmで100キロを超えています。東海道新幹線を経由しているので大都市近郊区間内相互発着の乗車券ではないので有効期間は2日間となり、途中下車が可能となります。
東北本線以遠が省略され、経路が不明確であることから二重抹線で「東北」を訂正してあります。


路線名を見てみます。マルスシステムと線路名称で異なるケースが見られます。
・新宿(山手線2)池袋
線路名称上は品川〜新宿〜田端間が山手線なのですが、マルスシステム上は代々木〜新宿間が中央線であり、この区間で分断されています。
山手線……品川〜代々木。
山手線2…新宿〜田端〜日暮里。
田端〜日暮里は線路名称上、東北本線なのですがマルスシステム上は田端から先の日暮里までが山手線です。なお印字は山手線・山手線2のどちらも「山手線」です。

・赤羽(東北本線2)田端(山手線2)日暮里(東北本線)秋葉原
赤羽〜秋葉原間は路線名称上全区間東北本線なのですが、マルスシステム上の東北本線は以下のようになっています。印字上は1〜3が「東北」、4が「埼京」です。
東北本線……東京〜盛岡。ただし、東京〜日暮里〜尾久〜赤羽〜川口〜大宮。
東北本線2…田端〜赤羽。
東北本線3…岩切〜利府(利府支線)。
東北本線4…赤羽〜武蔵浦和〜大宮(埼京線)。

上記の山手線2と合わせ、赤羽〜秋葉原間を通過するだけでマルスシステム上は3路線を経由したことになります。


なお、秋葉原はJRの旅客営業規則第87条に定める東京山手線内に含まれる駅です。
営業キロが100キロを超え東京山手線内の駅を発着駅とする場合、発着駅名は「東京山手線内」となるのですが上記規則の但し書きにある通り、一旦東京山手線内の外である赤羽を経由し、秋葉原を着駅とする場合は着駅印字が「秋葉原」という単独駅となります。

(東京山手線内にある駅に関連する片道普通旅客運賃の計算方)

第87条 東京山手線内にある駅と、中心駅から片道の営業キロが 100キロメートルを超え200キロメートル以下の区間内にある駅との相互間の片道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する。
ただし、東京山手線内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、東京山手線内の外を経て、再び東京山手線内を通過するとき、又は東京山手線内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、東京山手線内を通過して、東京山手線内の外を経るときを除く。

この乗車券ですが、実際のところ上記経路を指定し発券すると有効期間は1日、途中下車不可で85mm券で発券されます。
これは上記経路の東京以遠が以下のように置き換えられている事によります。

東京(東北本線)神田(中央東線)新宿(山手線2)池袋(赤羽線)赤羽(東北本線2)田端(山手線)日暮里(東北本線)秋葉原

東京(東北本線)秋葉原

これにより営業キロ84.1km、運賃は1450円となります。営業キロが100キロを超えていないため、途中下車ができません。
大都市近郊区間内相互発着の乗車券でもないにもかかわらず、なぜこのような経路の置き換えが発生したのでしょうか。

これは旅客営業規則第160条にある、旅客営業規則第70条に定める区間を発着駅とする場合は同区間内の迂回乗車が認められているため、特に指定がなければ最短経路で発売するよう補正されるためです。ただし迂回乗車中は途中下車が認められず、下車すると区間変更として扱われます。

(特定区間発着の場合のう回乗車)
第160条 第70条第1項に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券又は普通回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、う回して乗車することができる。ただし、別に定める場合を除き、う回乗車区間内では、途中下車をすることはできない。
2 前項の規定にかかわらず、第70条に掲げる図の太線区間内の駅相互発着となる乗車券を所持する旅客は、東海道本線(新幹線)東京・品川間及び東北本線(新幹線)東京・上野間をう回して乗車することはできない。
3 第70条に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券を所持する旅客が、第1項の規定によりう回乗車した場合において、そのう回中の途中駅に下車したときは、区間変更として取り扱う。

このため、大都市近郊区間内相互発着でなくても「補正禁止」を行い、乗車経路通りの乗車券とする必要があります。

この乗車券では途中下車を多数試みました。途中下車印が潰れて判読できないものが多数あったのが残念なところです。