旅客営業取扱基準規程第109条

八丁堀から大井町への片道乗車券です。
経由欄は京葉・東京・新幹線・上野・東北・常磐・武蔵野・東北・北与野・北赤羽・中央東・東海とあります。


運賃計算上の経路は以下のとおりです。
八丁堀(京葉線)東京(東北新幹線)上野(東北本線)日暮里(常磐線)新松戸(武蔵野線)南浦和(東北本線)大宮(東北本線[埼京線])赤羽(赤羽線)池袋(山手線)品川(東海道本線)大井町

営業キロは102.6kmです。東北新幹線を経由しており大都市近郊区間内相互発着ではないため、2日間有効となり途中下車可です。
八丁堀〜大井町間は最短経路では八丁堀(京葉線)東京(東海道本線)大井町 10.4km、210円です。
ただ遠回りしているだけの乗車券で、特に変わったところは無いように見えますが、規則上は少々複雑な乗車券です。

東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第70条(以下、規則第70条)においては、以下のように定められています。

第70条 第67条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間を通過する場合の普通旅客運賃・料金は太線区間内の最も短い営業キロによつて計算する。この場合、太線内は、経路の指定を行わない。
(以下略)

規則では「最も短い営業キロによつて計算する」と断言しており、「計算できる」のような表記ではありません。
このため、規則第70条は強制的に適用される性格のものであり、旅客の申し出や係員の判断での適用除外はできないことになります。

ところで今回の経路においては、規則第70条に定める区間を2度通過しています。

八丁堀(京葉線)東京(東北新幹線)上野(東北本線)日暮里(常磐線)新松戸(武蔵野線)南浦和(東北本線)大宮(東北本線[埼京線])赤羽(赤羽線)池袋(山手線)品川(東海道本線)大井町

上記に示す通り、東京〜日暮里間と、赤羽〜品川間の2区間です。
東京〜日暮里間は東北本線(東北新幹線)経由が最短経路なのですが、赤羽〜品川間は池袋・渋谷経由か上野・東京経由かによって営業キロが変わってきます。
・赤羽(赤羽線)池袋(山手線)品川:20.9km
・赤羽(東北本線)東京(東海道本線)品川:20.0km

最短経路は東京経由である20.0kmなのですが、東京経由とすると日暮里で経路が重複してしまい片道乗車券として発売できないため、この乗車券は遠回りである新宿経由で発売しています。
規則第70条の規定に反した発売ですがこれは誤発売というわけではなく、東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程第109条では以下のとおり規定されています。

(特定区間を再び経由する場合の普通旅客運賃の計算方)
第109条 規則第69条及び同第70条に規定する区間の一方の経路を通過した後、再び同区間内の他の経路を乗車する場合の普通旅客運賃は、旅客の実際に乗車する経路の営業キロ又は運賃計算キロによつて計算することができる。
(以下略)

規則第70条区間を通過する場合、運賃計算は最短経路が原則だが、2度以上通過する場合は実際に乗車する経路(遠回りでも良い)で発売できる、というものです。
マルス端末上は遠回りの経路を入力し「補正禁止」を指定するのみで発券できます。
補正禁止を指定しない場合、赤羽〜品川間が自動的に最短経路である東京経由に置き換えられ、日暮里以遠が経路重複のためエラーとなり発券できません。

出札の方も発券できないのは経路が重複するためで、補正禁止をすることで発券できることはご存知でした。念のため規則第70条区間に補正禁止を指定していいかどうかマルス指令に問い合わせ、発売可であると確認した上で発売されました。