後払の普通回数券

とある駅と広島との間の普通回数券です。券面には[後払]の押印があります。
この回数券は見せて頂いたもので、私が購入したものではありません。


[後払]は西日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第188条第1項第3号に規定される「旅客運賃・料金を後払とするもの」に表示される記号です。
規則第4条では運賃・料金は前払いを原則としつつ、旅客会社が認めた場合は後払いとすることもできるとしています。後払いの例としては規則第13条ただし書きにある降車時に旅客運賃・料金を支払うワンマン列車のケースが知られていますが、乗車券類を後払いで購入というケースもあります。

どのような理由で後払いの回数券が発売されるのかというと、これは広島市の行っている高齢者公共交通機関利用助成の一環で、高齢者(70歳以上)の社会参加を目的に6000円を上限とした市内のバス・電車の利用に対し助成を行っています。
JR回数券はいくつかある助成メニューのうちの一つです。

具体的な金額はわからないのですが、広島市から送付された申込書を駅出札窓口に持っていくことで高齢者の一部自己負担で安価に回数券を購入でき、差額は後日JR西日本から広島市へ請求されることになっているようです。
購入時点では全額がJR西日本へ支払われていないためか、[後払]が押印されるようです。また高齢者向け助成の一環という性質上、無記名券ではありますが本人以外の利用が認められていません。自己負担額より払戻額の方が多くなるため全券片未使用・一部使用済に関わらず払い戻しも出来ないとのことでした。
[後払]はそういう「訳ありきっぷ」であることを示す意図があるのかもしれません。
なお、普通回数乗車券ですので規則第243条の規定により乗車変更(乗車券類変更・区間変更)もできません。

[後払]券の現物を目にしたのはこの時が初めてです。
広島市以外の自治体にもこういう制度があるのかもしれませんね。

(運賃・料金前払の原則)
第4条 旅客の運送等の契約の申込を行おうとする場合、旅客等は、現金をもって、所定の運賃・料金を提供するものとする。ただし、当社において特に認めた場合は、後払とすることができる。
(以下略)

(乗車券類の購入及び所持)
第13条 列車に乗車する旅客は、その乗車する旅客車に有効な乗車券を購入し、これを所持しなければならない。ただし、当社において特に指定する列車の場合で、乗車後乗務員の請求に応じて所定の旅客運賃及び料金を支払うときは、この限りでない。
(以下略)

(旅客運賃・料金の割引等に対する表示)
第188条 旅客運賃・料金の割引等を行う乗車券類には、その証として、関係券片の表面(第8号に規定する記号については表面)に、ゴム印の押なつにより、次の各号に定める記号等の表示を行う。ただし、特に設備する乗車券類、第8号に規定する記号については、これと異なる表示方をし、又はこの表示を省略することがある。
(1)(2)略
(3)旅客運賃・料金を後払とするもの [後払]
(以下略)

(割引乗車券等を所持する旅客に対する乗車変更の取扱制限)
第243条 区間・経路等に制限のある種類の割引乗車券又は普通回数乗車券を所持する旅客に対しては、乗車変更の取扱いをしない。