普通車指定席より安いグリーン車指定席

2015年4月1日の米沢→郡山間、つばさ138号の指定席特急券特急券・グリーン券です。
どちらも同じ日・同じ区間・同じ列車であるにもかかわらず、普通車は3590円、グリーン車は3390円と普通車のほうが200円高くなる逆転現象が発生しています。


なぜこのようなことが起こるのか、山形新幹線は案内上の愛称であり実際は在来線である奥羽本線の特急列車というのは知られていると思いますが、そのことは料金制度にも現れています。
以下、規定を順に見ていきます。

特急料金は新幹線区間と在来線区間の接続駅である福島で打ち切られ合算されます。福島で乗り換える場合、直通列車利用で福島では下車しない場合とも同様です。
新幹線と在来線特急の乗継ということになりますが、福島駅は乗継割引の対象駅となっておらず割引は適用されません(※1)。一方で当日中に乗り換える場合は在来線部分に実質的な乗継割引といえる特定特急料金が設定されています(※2)。乗継割引が5割引であるのに対し特定料金は3割引と割引率が抑えられています。直通運転を行っているため少なくとも乗換で不便にはなっていないためでしょうか。
※1 東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第57条の2第1号イ
※2 規則第57条の3第4項、具体的な料金は東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程(以下、基準規程)第129条の2第1項第6号のア。なお特定特急料金は割引ではありませんので、特定特急料金に対して株主優待割引、ジパング割引、大人の休日倶楽部割引等を適用させることは可能です。

一方で、グリーン料金は新幹線と在来線で分断されることはなく、乗車全区間に対して発売されます(※3)。さらに特急のグリーン車を利用する場合は特急料金から指定席料金相当額が減額されるのですが、減額は新幹線部分(※4)と在来線部分(※5)それぞれに行われます。
※3 規則第58条第6項、具体的な料金は規則第130条第1項第1号イの(ロ)のa
※4 規則125条第1項第1号イの(イ)のa
※5 基準規程第129条の2第1項第6号ア但し書き

さらに、乗車日である4月1日は繁忙期です(※6)。特急指定席(グリーン車除く)利用時は新幹線部分(※4)、在来線部分(※5)とも繁忙期割増が加算された特急料金となります。
※6 規則第57条の3第1項第2号


以上から、普通車指定席特急料金、グリーン車指定席特急料金を見てみます。
【普通車指定席】
在来線部分:米沢→福島40.1km、通常期特定特急料金(指定席)は890円、繁忙期割増140円を加え1030円(※7)
※7 50kmまでのA特急料金1270円の3割引889円、10円未満切上げで890円、繁忙期割増200円の3割引140円と一致しています。
新幹線部分:福島→郡山の通常期指定席特急料金は規則別表第2号ナにより2360円、繁忙期割増200円を加え2560円
以上を合計し、3590円が繁忙期の普通車指定席特急料金となります。

グリーン車指定席】
在来線部分:米沢→福島の通常期特定特急料金(指定席)890円、グリーン車利用なので指定席料金相当額の370円(※8)を減じ520円
※8 特急列車指定席料金相当額である520円の3割引364円、10円未満切上げで370円と一致しています。
新幹線部分:福島→郡山の通常期指定席特急料金は2360円、グリーン車利用なので指定席料金相当額の520円を引き1840円
グリーン料金部分:米沢→郡山86.2kmに対するグリーン料金1030円
以上を合計し、3390円グリーン車指定席特急料金となります。


このような逆転現象が発生するのは新幹線・在来線直通特急(接続駅で乗り換える場合も同様)の料金が、
・繁忙期加算料金が新幹線・在来線の両方にかかること。
グリーン車利用時は通常期の特急料金が基準となること。
グリーン車利用時の指定席料金相当額減額が、新幹線・在来線の両方にかかること。
・グリーン料金は接続駅で分断されず、通しの営業キロで計算されること。
のようになっていることが原因と考えられます。この逆転現象は繁忙期のみ発生します。


なお、米沢→郡山の自由席特急料金は1380円(通年同額)です。
1時間かからない区間でもあり、指定席やグリーン席を利用すると約2000円追加で必要となることから、需要が小さくあまり問題になっていないのかもしれません。


山形新幹線部分は特定特急料金520円、東北新幹線部分も特定特急料金860円です。券面は新幹線と在来線を通しで発売し、在来線部分が特定料金であることを示す「幹在特」とあります。
新幹線部分も特定料金ですが、新幹線部分は規則第57条第1項第1号のニの規定により発売される「特定特急券」、在来線部分は規則第57条の3第4項の規定により発売される「特定料金の特別急行券」です。
規則第57条第1項第1号のニは「座席指定なしが前提で区間が主」、規則第57条の3第4項は「指定席特急券が前提で料金が主」です。実質的な違いはほとんどありませんが、発売される根拠が異なっています。新幹線部分は特定の料金で発売される特定特急券であり、特定料金の特別急行券ではないため「幹特在特」とはなっていません。
なお、九州新幹線新八代鹿児島中央間の暫定開業時は在来線・新幹線とも規則第57条の3で特定料金の特別急行券を発売すると規定されていましたので「幹特在特」の特急券が発売されていました。

なお、同様の現象は福島接続の東北・山形新幹線に限らず、盛岡接続の東北・秋田新幹線でも起こります。
一例として雫石→新花巻間、繁忙期指定席特急料金3590円、グリーン車指定席特急料金3390円です。


【旅客営業規則】
(急行券の発売)
第57条 旅客が、急行列車に乗車する場合は、次の各号に定めるところにより、急行列車ごとに特別急行券又は普通急行券を発売する。
(1)特別急行
イ〜ハ 略
ニ 特定特急券
次に定める区間を、特別車両以外の座席車又は第13条第3項の規定によりB寝台を設備した寝台車に乗車し、自由席(自由席のない列車にあつては、指定席)を使用する場合に、乗車できる列車及び乗車区間を指定し、特定の特別急行料金によつて、座席の使用を条件としないで発売する。
(イ)新幹線
a 隣接駅間(九州新幹線を除く。)及び以下の区間
  東京・新横浜間
  三島・静岡間
  静岡・浜松間
  豊橋・名古屋間
  福山・三原間
  三原・広島間
  新山口新下関
  東京・大宮間
  古川・一ノ関間
  一ノ関・北上間
  北上・盛岡間
  熊谷・高崎間
  博多・久留米間
(以下略)

(乗継急行券の発売)
第57条の2 旅客が、急行列車相互間に乗継ぎをする場合で、次の各号に該当するとき(以下「乗継条件」という。)は、第1号に規定する○印の1個の急行列車に対して割引の急行券を発売する。ただし、設備定員が複数の寝台個室及び別に定める特別急行列車の個室に乗車する場合に発売する特別急行券については、割引の取扱いをしない。
(1)次に掲げる急行列車相互間について、それぞれに定める乗継駅において直接乗継ぎをする場合(同一の急行列車を先乗列車及び後乗列車として直接乗継ぎをする場合を含む。)

 急行列車乗継駅
新幹線の特別急行列車

○その他の各線区の急行列車(本四備讃線を経由する急行列車と
四国内の急行列車を坂出駅又は高松駅で相互に乗継ぐ場合は、
岡山駅を乗継駅とする急行列車に限る。)
ただし、次に掲げる急行列車は除く。

(イ)
新青森駅又は青森駅を乗継駅として乗車する寝台車を連結した特別急行列車
(ロ)
奥羽本線を経由する急行列車(新青森・青森間のみを乗車する場合に限る。)
新横浜・新下関間の新幹線停車駅、新青森駅青森駅(新青森駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)、
長岡駅新潟駅長野駅直江津駅(上越妙高駅に直通して運転する急行列車に乗車し、
上越妙高駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)、金沢駅津幡駅(金沢駅に直通して運転する
急行列車に乗車し、金沢駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)大阪駅(新大阪駅で新幹線と乗り継ぐ
場合に限る。)、又は坂出駅若しくは高松駅(いずれも岡山駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)
(以下略)

(特定の特別急行券の発売)
第57条の3 第57条第1項第1号イの規定により指定席特急券を発売する場合で、次の各号に掲げる期間内の日に特別車両及びコンパートメント個室以外の座席車に乗車するときは、特定の特別急行料金によつて指定席特急券を発売する。ただし、乗車する列車を限定して発売することがある。
(1)略
(2)旅客の乗車する日が、次に掲げる期間内の日であるとき。ただし、北海道旅客鉄道会社線内及び九州旅客鉄道会社線の新幹線以外の線区の停車駅相互間並びに別表第1号の2第1項に定める列車群に含まれる列車にを乗車する場合を除く。
 3月21日から4月5日まで
 4月28日から5月6日まで
 7月21日から8月31日まで
 12月25日から翌年1月10日まで
(中略)
4 旅客が、東北本線(新幹線)の特別急行列車と奥羽本線福島・新庄間の特別急行列車(第57条第2項第6号の規定により1個の特別急行列車とみなす場合を含む。)とを福島駅において直接乗継ぎをする場合(当該線区を直通して運転する列車に乗車する場合を含む。)、又は東北本線(新幹線)若しくは東北新幹線特別急行列車と田沢湖線奥羽本線大曲・秋田間の特別急行列車とを盛岡駅において直接乗継ぎをする場合(当該線区を直通して運転する列車に乗車する場合を含む。)で、次の各号に該当するときは、奥羽本線福島・新庄間及び盛岡・秋田間の1個の特別急行列車に対して別に定める特定の特別急行料金によつて指定席特急券立席特急券、自由席特急券又は特定特急券を発売する。
(1)乗継ぎをする後乗列車の乗車日が先乗列車の乗車日の当日である場合
(2)当該乗車に必要な乗車券及び特別急行券を同時に購入し、又は当該乗車に必要な乗車券を呈示して、先乗列車及び後乗列車の特別急行券を同時に購入し、これに相当の証明を受けた場合
(以下略)

(特別車両券の発売)
第58条 旅客が、特別車両に乗車する場合は、次の各号に定めるところにより、特別車両に乗車する列車ごとに、特別車両券を発売する。
(中略)
6 第1項本文の規定にかかわらず、次の各号に定める区間特別急行列車の停車駅相互間を、新幹線と新幹線以外の線区を直通して運転する特別急行列車の特別車両に当該線区をまたがつて乗車する場合(新幹線と新幹線以外の特別急行列車を途中出場しないで乗り継ぐ場合を含む。以下同じ。)は、新幹線の区間(第2項第1号の規定により2個以上の特別急行列車の特別車両を乗り継ぐ場合を含む。)と新幹線以外の区間(第2項第6号の規定により特別急行列車の特別車両を乗り継ぐ場合を含む。)を通じた全区間に対して1枚の特別車両券を発売する。ただし、別に定めるところにより特別急行列車ごとに発売することがある。
(1)東京・新庄間(東北本線(新幹線)、奥羽本線経由)
(2)東京・秋田間(東北本線(新幹線)、田沢湖線奥羽本線経由)
(以下略)

(大人急行料金)
第125条 大人急行料金は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)特別急行料金
イ 新幹線
(イ)指定席特急料金(特別車両以外の個室に乗車する場合は、1人当りの料金とする。)
a b、c、d、e、f及びg以外の指定席特急料金 別表第2号ツ、ナ、ラ、ム及びウに定める料金とする。ただし、第57条の3第1項第1号の規定により発売するものにあつては、同表に定める料金から200円を、同条第3項の規定により発売するものにあつては、同表に定める料金から520円をそれぞれ低減した額とし、また、同条第1項第2号の規定により発売するものにあつては、同表に定める料金に200円を加算した額とする。
(以下略)

(特別車両料金)
第130条 特別車両料金は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)特別車両料金(A)
イ ロ以外の特別車両料金(A)
(イ)略
(ロ)東日本旅客鉄道会社線内相互発着となる場合及び上越妙高・金沢間の新幹線停車駅相互発着となる場合の特別車両料金(A)
a b、c及びd以外の特別車両料金(A)

営業キロ
地帯
100キロ
メートルまで
200キロ
メートルまで
300キロ
メートルまで
400キロ
メートルまで
500キロ
メートルまで
600キロ
メートルまで
700キロ
メートルまで
701キロ
メートル以上
料金1,030円2,060円3,090円4,110円4,110円4,110円4,110円5,140円
(以下略)


【旅客営業取扱基準規程】
(大人の特別急行料金の特定)
第129条の2 規則第125条第1号ロの(イ)の規定にかかわらず、次の各号に掲げる特別急行券に対する特別急行料金は、当該各号に定める額とする。
(1)〜(5)略
(6)規則第57条の3第4項の規定により、奥羽本線福島・新庄間並びに田沢湖線及び奥羽本線大曲・秋田間に発売する特別急行
ア 指定席特急料金
次表に定める料金とする。ただし、規則第57条の3第1項第1号の規定により発売するものにあつては、同表に定める料金から140円を、同条第3項の規定により発売するものにあつては、同表に定める料金から370円をそれぞれ低減した額とし、また、同条第1項第2号の規定により発売するものにあつては、同表に定める料金に140円を加算した額とする。

営業キロ
地帯
50キロ
メートルまで
100キロ
メートルまで
150キロ
メートルまで
料金890円1,200円1,650円
イ 立席特急料金、自由席特急料金及び特定特急料金
アの表に定める料金から370円を低減した額とする。
(以下略)