京急川崎→宇都宮の連絡乗車券(新幹線経由)

京急川崎から宇都宮への片道乗車券です。
品川を接続駅とする京浜急行電鉄JR東日本の連絡乗車券で、京浜急行電鉄の特別補充券で発売されました。


経路は京急川崎(京急本線)品川(東海道本線)東京(東北新幹線)宇都宮です。
京浜急行電鉄京急川崎→品川は営業キロ11.8km、運賃230円です。JR東日本区間は品川→宇都宮ですが、品川は東京山手線内に含まれる駅で東京山手線内の中心駅である東京と宇都宮は109.5kmと100kmを超えています。したがって東日本旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則(以下、連規)第47条の規定によりJR線は東京→宇都宮の営業キロ109.5kmに対する運賃1940円となり、合計121.3km 2170円となります。
合計営業キロが100kmを超え、かつ大都市近郊区間に含まれない東北新幹線を経由しているので2日間有効となり、京急線を含めた全区間で途中下車が可能です。連規第76条注意書きにより、東京山手線内の順路上の各駅での途中下車も可能となります。京急蒲田御徒町において途中下車しました。

2014年4月1日以降、東京急行電鉄東武鉄道においては両社が発売するJR東日本への連絡乗車券のうち、新幹線経由となるものを発売しないことが規定上明記されるようになりました(JR東日本が発売する場合は新幹線経由も発売可)。一方で京浜急行電鉄は新幹線を経由するJR東日本への連絡乗車券が現在も発売可能です。

品川を接続駅とする京浜急行電鉄JR東日本の連絡範囲は以下のとおりです。
京浜急行電鉄:各駅
JR東日本(※):東海道本線、山手線、赤羽線南武線鶴見線武蔵野線横浜線根岸線横須賀線、相模線、伊東線中央本線 東京〜甲府間、青梅線五日市線東北本線 東京〜宇都宮間・尾久・北赤羽〜北与野間、常磐線 日暮里〜水戸間、川越線高崎線両毛線水戸線総武本線京葉線外房線内房線成田線

(東京山手線内にある東日本旅客鉄道株式会社線の駅又はこれに接続する連絡会社線駅発着旅客に対する旅客会社線区間の片道普通旅客運賃の計算方)
第47条 東京山手線内にある東日本旅客鉄道株式会社線の駅又はその駅に接続する連絡会社線の駅を発駅又は着駅とする場合であって、中心駅から、旅客会社線営業キロが片道100キロメートルを超え200キロメートル以下の区間にある駅との場合の旅客会社線区間の普通旅客運賃は、当該中心駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによって計算する。ただし、東京山手線内にある駅又はその駅に接続する連絡会社線駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、東京山手線内の外を経て、再び東京山手線内を通過するとき、若しくは東京山手線内にある駅又はその駅から接続する連絡会社線の駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、東京山手線内を通過して、東京山手線内の外を経るときを除く。
(注)「東京山手線内にある東日本旅客鉄道株式会社線の駅」とは、旅客規則第87条に規定する駅をいう。

(途中下車)
第76条 旅客は、旅行開始後、その所持する乗車券によって、その券面に表示された発着区間内の着駅(旅客運賃が同額のため2駅以上を共通の着駅とした乗車券については最終着駅)以外の駅に下車して出場した後、再び列車等に乗り継いで旅行すること(以下「途中下車」という。)ができる。ただし、次の各号に定める駅(連絡接続駅を除く。)においては、途中下車をすることができない。
(1)全区間のキロ程が片道100キロメートルまでの区間に対する普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅。ただし、列車等の接続等で、接続関係等の理由により、旅客が下車を希望する場合を除く。
(2)第46条及び第47条の規定によって発売した乗車券を使用する場合は、当該乗車券の券面に表示された発駅又は着駅と同一の特定都区市内又は東京山手線内の旅客会社線
(3)前条第1項第1号イの(ロ)に規定する区間に発着する普通乗車券所持の旅客は、その区間内の駅
(4)自動車線区間の駅。ただし、運輸機関が指定した駅を除く。
(5)運輸機関が特に途中下車できない駅を指定した場合は、その指定した駅
(注)第46条又は第47条の規定によって発売した乗車券を使用する場合であっても、特定都区市内は東京山手線内にある旅客会社線駅に接続する連絡会社線の駅発又は着の乗車券による旅客は、その接続駅と同一の都区市内又は東京山手線内旅客会社線の順路内の駅で途中下車をすることができる。


この乗車券のJR部分における在来線区間での途中下車を考えてみます。

一般的に新幹線と並行在来線は同じ線路として扱われています。
例えば東京山手線内→宇都宮(経由:東北新幹線)の乗車券は乗車券は変更することなく並行在来線東北本線を利用できますし、新幹線停車駅である大宮・小山の他、尾久(※)・赤羽・武蔵浦和(※)などでの途中下車も可です。東京山手線内→宇都宮(経由:東北本線)の乗車券で新幹線の利用も可能です。
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第69条第1項第2号、第3号に定められる経路特定区間規則第158条により迂回乗車が可能です。

これは規則第16条の2東北新幹線東北本線が同じ線路と定められているからですが、この条文は連規第15条で準用されていません。
すなわち、連絡乗車券においては新幹線と並行在来線は異なる線路として扱われることになります。連絡運輸はJR6社で異なっていること、新幹線と在来線で会社が異なる区間があることから同一の線路として扱うと不都合があるのでしょう。

一方で連規においても乗車経路を選択できる区間が定められています。
連規第77条で第1号で規則第69条第1項(経路特定区間)、第157条第1項(選択乗車区間)を、第2号でJR線部分が大都市近郊区間内相互となる連絡乗車券のJR線区間が定められています。さらに連規第79条では規則第158条(経路特定区間)、第159条(70条区間通過)、第160条(70条区間発着)を準用しています。
規則第158条では新幹線単独駅を含む区間並行在来線から外れる区間については新幹線と並行在来線の間で選択乗車できることを定めていますが、単独駅のない区間までは含まれていません。


今回の乗車券は京急川崎→品川→宇都宮です。JR区間70条区間発の乗車券ですので、規則第160条の規定により同区間内の迂回はできますが、迂回中の途中下車はできません。
東京〜宇都宮間を新幹線経由とした連絡乗車券で、並行在来線である東北本線御徒町で途中下車をしています。規則第70条に示される図では新幹線と並行在来線を区別していませんので品川〜東京〜上野間は新幹線・並行在来線ともに利用可であり途中下車できたと解釈できますが、前提として規則第16条の2により同一の路線としているから区別していないだけとも解釈できます。

前者の解釈とすると70条区間内の並行在来線区間においてもそのまま途中下車できますが、仮に後者の解釈が支持されたとすると区間外の利用となりますので本来は区間変更が必要です。
原券は大都市近郊区間内相互の乗車券ではなく片道100kmを超えていますので、連規第91条第2項第1号イの(ロ)の規定により、東京〜上野間を新幹線から在来線に変更したとすると「不乗区間:東京→上野、新幹線経由 140円」と「変更区間:東京→上野、東北本線経由 140円」との差額となります。同額の区間であるため、そのまま途中下車を認めた……となるのでしょうか。実際の現場での運用としては同額の区間であるため、新幹線経由の連絡乗車券でも並行在来線にそのまま乗車でき、途中下車も認められるものと思われます。

過去の近鉄線連絡乗車券でも同じような事例がありました。経由「東海・山陽」と在来線経由でありながら、新大阪〜広島間で新幹線を利用しました。
「不乗区間大阪市内→広島市内(大阪→広島であるが特定都区市内が適用)、在来線経由5460円」「変更区間大阪市内→広島市内、新大阪・新幹線経由5460円」で同額です。


【旅客営業規則】
(東海道本線(新幹線)、山陽本線(新幹線)、東北本線(新幹線)、高崎線(新幹線)、上越線(新幹線)、信越本線(新幹線)及び鹿児島本線(新幹線)に対する取扱い)
第16条の2 次の各号の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区とは、同一の線路としての取扱いをする。
(1)東海道本線山陽本線中神戸・新下関間/東海道本線(新幹線)及び山陽本線(新幹線)中新神戸新下関
(2)東北本線東北本線(新幹線)
(3)高崎線上越線及び信越本線高崎線(新幹線)、上越線(新幹線)及び信越本線(新幹線)
(4)鹿児島本線中博多・新八代間及び川内・鹿児島中央間/鹿児島本線(新幹線)中博多・新八代間及び川内・鹿児島中央
(以下略)

(特定区間における旅客運賃・料金計算の営業キロ又は運賃計算キロ9
第69条 第67条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる区間の普通旅客運賃・料金は、その旅客運賃・料金計算経路が当該各号末尾のかつこ内の両線路にまたがる場合を除いて、○印の経路の営業キロ(第9号については運賃計算キロ。ただし、岩国・櫛ヶ浜間相互発着の場合にあつては営業キロ)によつて計算する。この場合、各号の区間内については、経路の指定を行わない。
(1)大沼以遠(渡島大野方面)の各駅と、森以遠(石倉方面)の各駅との相互間
 東森駅経由函館本線
大沼公園駅経由函館本線
(2)日暮里以遠(鶯谷又は三河島方面)の各駅と、 赤羽以遠(川口、北赤羽又は十条方面)の各駅との相互間
 尾久経由東北本線
○王子経由東北本線
(3)赤羽以遠(尾久、東十条又は十条方面)の各駅と、大宮以遠(土呂、宮原又は日進方面)の各駅との相互間
 戸田公園与野本町経由東北本線
○川口・浦和経由東北本線
(以下略)

(特定区間におけるう回乗車)
第158条 第69条の規定により発売した乗車券を所持する旅客は、同条第1項各号の規定の末尾に記載されたかつこ内の○印のない経路をう回して乗車することができる。
2 第69条第1項各号の区間内において2枚以上の普通乗車券を併用して乗車する旅客は、その券面に表示された経路にかかわらず、同号かつこ内の他方の経路を乗車すること ができる。ただし、他方の経路の乗車中においては、途中下車をすることができない。

(特定区間を通過する場合のう回乗車)
第159条 旅客は、普通乗車券、普通回数乗車券又は団体乗車券によつて、第70条に掲げる図の太線区間を通過する場合には、この区間をう回して乗車することができる。
2 普通乗車券、普通回数乗車券又は団体乗車券によつて第70条第2項の規定により乗車する旅客は、第69条第1項第5号に掲げるいずれかの経路及び第70条に掲げる図の太線区間をう回して乗車することができる。

(特定区間発着の場合のう回乗車)
第160条 第70条第1項に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券又は普通回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、う回して乗車することができる。ただし、別に定める場合を除き、う回乗車区間内では、途中下車をすることはできない。
2 前項の規定にかかわらず、第70条に掲げる図の太線区間内の駅相互発着となる乗車券を所持する旅客は、東海道本線(新幹線)東京・品川間及び東北本線(新幹線)東京・上野間をう回して乗車することはできない。
3 第70条に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券を所持する旅客が、第1項の規定によりう回乗車した場合において、そのう回中の途中駅に下車したときは、区間変更として取り扱う。


【旅客連絡運輸規則】
(準用規定)
第15条 旅客規則第21条・第21条の1・第23条の2・第23条の3・第24条及び第25条の規定は、この節に準用する。
(注)準用する旅客規則の内容は、次のとおりである。
第21条 乗車券類の発売日
第21条の2 乗車券類の発売時間及び発売区間
第23条の2 払いもどし等について特約をした乗車券類の発売
第23条の3 割引乗車券の発売の制限
第24条 割引乗車券等の不正使用の場合の取扱い
第25条 割引証が無効となる場合及びこれを使用できない場合

(乗車区間の選択)
第77条 次の各号の旅客は、当該各号に掲げる区間のうち、いずれか一方を選択して乗車することができる。
(1)旅客規則第69条第1項及び第157条第1項に規定する区間発着の普通乗車券を所持する旅客
  同条に規定する区間又は経路
(2)第75条第1項第1号イの(ロ)に規定する区間発着の普通乗車券を所持する旅客
  東京、大阪、福岡、新潟又は仙台付近旅客会社線大都市近郊区間内の経路

(準用規定)
第79条 旅客規則第147条から第153条まで、第155条、第158条から第161条まで、第164条から第168条まで、第170条から第174条まで、第176条、第182条の2及び第182条の3の規定は、この章に準用する。
(注)準用する旅客規則の内容は、次のとおりである。
第147条 乗車券類の使用条件
第148条 乗車券類の効力の特例
第149条 券面表示事項が不明又は不備の乗車券類
第150条 不乗区間に対する取扱い
第151条 有効期間の起算日
第152条 小児用乗車券類の効力の特例
第153条 乗車券類不正使用未遂の場合の取扱方
第155条 継続乗車
第158条 特定区間におけるう回乗車
第159条 特定区間を通過する場合のう回乗車
第160条 特定区間発着の場合のう回乗車
第161条 定期乗車券による急行列車等への乗車禁止
第164条 改氏名の場合の定期乗車券の書替
第165条 乗車券が前途無効となる場合
第166条 前途無効となる乗車券の特例
第167条 定期乗車券以外の乗車券が無効となる場合
第168条 定期乗車券が無効となる場合
第170条 通学定期乗車券等の効力
第171条 学生用割引乗車券等の効力
第172条 急行券の効力
第173条 指定席特急券の指定駅から乗車しない場合の取扱い
第174条 急行券が無効となる場合
第176条 指定特別車両券の指定駅から乗車しない場合等の取扱い
第182条の2 座席指定券の効力
第182条の3 座席指定券の指定駅から乗車しない場合等の取扱い

(区間変更)
第91条 普通乗車券、自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券を所持する旅客は、旅行開始後又は使用開始後において、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、当該乗車券類に表示された着駅又は経路について、次の各号に定める変更(以下「区間変更」という。)をすることができる。
(1)着駅を、当該着駅をこえた駅への変更
(2)着駅を、当該着駅と異なる方向の駅への変更
(3)経路を、当該経路と異なる経路への変更
2 区間変更の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
(1)普通乗車券
イ 次により取り扱う。この場合、原乗車券が、割引普通乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)であって、その割引が実際に乗車船する区間に対しても適用のあるものであるときは、変更区間及び不乗車船区間に対する旅客運賃を原乗車券に適用した割引の普通旅客運賃によって計算する。
 (イ)前項第1号に規定する場合は、変更区間に対する普通旅客運賃を収受する。
 (ロ)前項第2号及び第3号に規定する場合は、変更区間(変更区間が2区間以上あるときで、その変更区間の間に原乗車券の区間があるときは、これを変更区間とみなす。以下同じ。)に対する普通旅客運賃と原乗車券の不乗車船区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。
ロ イの場合において、原乗車券(学生割引普通乗車券を除く。)が次のいずれかに該当するときは、原乗車券の区間に対してすでに収受した旅客運賃と実際の乗車船区間に対する普通旅客運賃とを比較し、不足額を収受し、過剰額は払いもどしをしない。この場合、原乗車券が、割引普通乗車券であって、その割引が実際に乗車船する区間に対しても適用のあるものであるときは、実際の乗車船区間に対する普通旅客運賃を原乗車券に適用した割引率による割引の普通旅客運賃によって計算する。
 (イ)第75条第1項第1号イ(ロ)に規定する区間内にある駅相互発着の乗車券で、同区間内の駅に区間変更の取扱いをするとき。
 (ロ)片道の乗車区間のキロ程が100キロメートル以内の普通乗車券で区間変更の取扱いをするとき。
(2)自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券
原乗車券類に対するすでに収受した料金と実際の乗車区間のキロ程又は同区間に対する料金を比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない。