吾妻線と大都市近郊区間

10月1日から有効となる立川から長野原草津口と、長野原草津口から立川への片道乗車券です。

左の乗車券の経路は立川(青梅線)拝島(八高線)倉賀野(高崎線)高崎(上越線)渋川(吾妻線)長野原草津口です。営業キロ156.8km、運賃計算キロ169.2kmで運賃は3020円です。有効期間2日で途中下車可となっています。
右の乗車券は逆向きですが同じ区間・同じ経路・同じ運賃で、有効開始日も10月1日で同じではありますが、有効期間は1日で下車前途無効と効力が異なっています。

この差は2014年10月1日に吾妻線の中之条、長野原草津口万座・鹿沢口の3駅でSuicaが使用できるようになることに合わせて東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規則)第156条が改定され、吾妻線が大都市近郊区間に含まれるようになったことによるものです。
なお、吾妻線八ッ場ダム工事に伴い9月末に一週間ほど列車を区間運休させて線路切り替え工事が行われました。10月1日から川原湯温泉駅が移転し、新線での運転となっています。営業キロも変更されました。右の乗車券は営業キロ156.5km、運賃計算キロ169.0kmです。

(途中下車)
第156条 旅客は、旅行開始後、その所持する乗車券によつて、その券面に表示された発着区間内の着駅(旅客運賃が同額のため2駅以上を共通の着駅とした乗車券については、最終着駅)以外の駅に下車して出場した後、再び列車に乗り継いで旅行することができる。ただし、次の各号に定める駅を除く。
(1)略
(2)次にかかげる区間(以下「大都市近郊区間」という。)内の駅相互発着の普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅
イ 東京附近にあつては、東海道本線中東京・熱海間(第16条の2の規定にかかわらず、東海道本線(新幹線)東京・熱海間を除く。)及び品川・新川崎・鶴見間、山手線、赤羽線南武線鶴見線武蔵野線横浜線根岸線横須賀線、相模線、伊東線中央本線中東京・塩尻間及び岡谷・辰野・塩尻間、青梅線五日市線八高線小海線小淵沢・野辺山間、篠ノ井線塩尻・松本間、東北本線中東京・黒磯間(第16条の2の規定にかかわらず、東北本線(新幹線)東京・那須塩原間を除く。)、日暮里・尾久・赤羽間及び赤羽・武蔵浦和・大宮間、常磐線中日暮里・いわき間、川越線高崎線(第16条の2の規定にかかわらず、高崎線(新幹線)大宮・高崎間を除く。)、上越線中高崎・水上間吾妻線両毛線水戸線日光線烏山線水郡線中水戸・常陸大子間及び上菅谷・常陸太田間、信越本線中高崎・横川間、総武本線京葉線外房線内房線成田線鹿島線久留里線及び東金線(以下これらの区間を「東京近郊区間」という。)

(以下略)


左の乗車券は規則改定前である9月30日に購入しており吾妻線は大都市近郊区間に含まれない路線でした。そのため営業キロに応じて有効日数・途中下車可否が判定されます。右の乗車券は規則改定後の10月1日に購入したので、営業キロによらず有効日数は1日かつ下車前途無効となっています。

規則第5条第2項の規定により有効開始日ではなく購入した時点で有効な規則が適用されるため、10月1日から有効となる乗車券でも効力に差が出てきます。

(契約の成立時期及び適用規定)
第5条 旅客の運送等の契約は、その成立について別段の意思表示があつた場合を除き、旅客等が所定の運賃・料金を支払い、乗車券類等その契約に関する証票の交付を受けた時に成立する。
2 前項の規定によって契約の成立した時以後における取扱いは、別段の定めをしない限り、すべてその契約の成立した時の規定によるものとする。


左の乗車券は途中下車できる代わりに大都市近郊区間内においても迂回乗車ができません。
一方、右の乗車券は大都市近郊区間内相互発着の乗車券ですので、規則第157条第2項の規定により近郊区間内での迂回乗車が認められています。

(選択乗車)
第157条 略
2 大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。

(以下略)

したがって、この乗車券で例えば長野原草津口(吾妻線)渋川(上越線)高崎(高崎線)大宮(東北本線)神田(中央本線)代々木(山手線)新宿(中央本線)立川の経路による迂回乗車が可能です。

帰りは実際に迂回して乗車しました。
群馬原町から上野への特急草津4号の特急券・グリーン券です。
同駅は自動券売機・指定席券売機みどりの窓口ともありませんが、POS端末が設置された出札窓口があり、指定券を料金専用補充券で発売しています。



川原湯温泉から群馬原町への片道乗車券です。
両駅ともSuicaサービスエリア外の駅ですが、吾妻線の車掌さんはSuica決済に対応した車内補充券発行機を所持しており、Suicaチャージ額で乗車券を購入することが可能です。



川原湯温泉駅の入場券です。新旧駅舎の記念入場券も発売していましたが、窓口営業開始後すぐに完売となったようです。
川原湯温泉駅も券売機等はなくPOS端末が設置された窓口のみでの営業ですが、群馬原町とは異なり指定券は扱っていません。
営業時間は駅舎移転前と同じく、毎日8:00〜16:30です。



吾妻線営業キロは以下のとおり変更されました。
旧:岩島(5.9km)川原湯温泉(5.9km)長野原草津口
新:岩島(6.5km)川原湯温泉(5.0km)長野原草津口

岩島〜川原湯温泉間は0.6km長く、川原湯温泉長野原草津口間は0.9km短くなり、吾妻線全体としては0.3kmの短縮となっています。
運賃については切り替え前後で高くなる区間、安くなる区間両方が存在します。1km未満ですので変わらない区間が殆どですが。


川原湯温泉から岩島への片道乗車券です。
左が旧営業キロ5.9kmで190円、右が新営業キロ6.5kmで210円です。この区間については20円の値上げとなっています。


川原湯温泉から羽根尾への片道乗車券です。
左が旧営業キロ10.3kmで240円、右が新営業キロ9.4kmで210円です。30円の値下げです。


事前に購入していた乗車券については、運賃が同額・または新営業キロの方が高い場合は上記規則第5条第2項によりそのまま使用でき、差額は不要です。新営業キロの方が安くなる場合、そのまま使用することも可能ですが、差額分の返金を受けることもできます。

旧運賃の乗車券での乗車変更については確認していませんが、おそらく消費税増税時と同じようにマルスシステムで乗車変更時に原券購入日を指定することで旧運賃・制度での発券が可能であったと思われます。安価になる場合は新運賃・制度での変更も可能でしょう。