首都圏私鉄各社の往復割引乗車券

首都圏の私鉄各社は4月1日から初乗り区間往復の割引乗車券の発売を開始しました。
消費税増税による運賃値上げへの経過措置的な位置付けなのでしょうか?

発売額は初乗り運賃の2倍から10円を引いたものですが、様式や効力は発売会社によって異なっています。
なお、小田急電鉄では発売していません。

京王電鉄「初乗り往復割引きっぷ」

補充券タイプです。発駅ごとに着駅がまとめられたハンコが用意され、着駅と運賃に丸をつけて発売します。
発売額は初乗り130円×2-10円で250円です。

相模原線には加算運賃が設定されているため、(京王稲田堤〜橋本を含む区間)と相模原線区間が別に設けてあります。

券面にもあるとおり、乗越するとその区間の運賃が別途必要となります。
例えば新宿〜代田橋は140円ですが、新宿〜笹塚間往復であるこのきっぷで乗り越すと差額10円ではなく笹塚〜代田橋間の130円が必要となり、かえって高額となってしまいます。
また往復で10円引きではありますが京王線130円区間ICカードでは124円です。ICカードで往復すると248円となり、このきっぷよりも安価です。
ICカードを持っていない旅客が初乗り区間を当日の間に往復利用する場合にのみ利用価値があるという、使いどころがなかなか難しそうなきっぷです。


着駅側は初乗り運賃の駅をすべて押印しますので、例えば明大前で購入すると以下のようになります。
京王電鉄の初乗りは4kmまでで3kmまでが一般的な他社と比べて長く、さらに京王線井の頭線とも隣駅が近いため、明大前から初乗り運賃で到達できる駅は18駅もあります。
なかなか壮観ですね。



西武鉄道「往復割引乗車券」

補充券タイプです。発駅の池袋はハンコがありましたが、東長崎は手書きとなりました。
発売額は初乗り150円×2-10円で290円です。

小児断線があり、千切る位置によって大人用・小児用を区別するようになっています。

入鋏欄がありませんが、それぞれの発駅名の下にスタンパーを押印するようです。



東武鉄道「○企 往復割引乗車券」

補充券タイプです。補充片道乗車券のような様式ですが、ゆき券・かえり券が一枚にまとまっているため入鋏欄が2箇所あるのが特徴です。
発売額はは初乗り150円×2-10円で290円です。券面に記載はありませんが、乗越するとその区間の運賃が別途必要になるとのことです。


東武鉄道「○企 浅草・東京スカイツリー®観光記念往復きっぷ」
浅草・とうきょうスカイツリーの両駅には「観光記念」と冠した専用の往復きっぷがあります。


浅草駅発売分です。


とうきょうスカイツリー駅発売分です。


浅草〜とうきょうスカイツリー相互以外のものを発売するために、両駅とも他の駅にある補充券タイプの往復乗車券も発売しています。
補充券タイプのものでとうきょうスカイツリー〜浅草間を発売頂きました。




京成電鉄「○企 初乗り往復割引きっぷ」

補充券タイプです。補充往復乗車券とよく似た様式です。
発売額は片道140円×2-10円で270円です。

東成田・成田湯川・空港第2ビル・成田空港は隣駅までの運賃が最低運賃を上回るためか、発売していませんでした。


一方で運賃体系の異なる京成千原線は専用の様式のものがありました。
このため、千葉中央駅には270円と370円の二種類のきっぷが用意されています。

千葉中央から千葉線 みどり台への初乗り往復割引きっぷです。他駅と同じく片道140円の2倍から10円を引いた270円が発売額です。


千葉中央から千原線 千葉寺への初乗り往復割引きっぷです。千原線の初乗り運賃は190円ですので、発売額は片道2倍の380円から10円を引いた370円です。


京成電鉄140円区間IC運賃は134円で、往復268円ですので初乗り往復割引きっぷの方が2円高くなります。
しかしながら190円区間IC運賃は185円で、往復370円と初乗り往復割引きっぷと同額です。だからといってこのきっぷの需要があるかどうかは微妙なところですが。




京浜急行電鉄「○企 初乗区間往復きっぷ」

改札端末で発券される磁気券です。自動改札機に対応しています。
85mmマルス券と同じサイズで、ゆき券がA券、かえり券がB券です。他社は発売当日限り有効ですが、このきっぷは2日間有効です。
発売額は片道140円×2-10円で270円です。



東京急行電鉄「○企 初乗り2枚きっぷ」

自動改札機に対応した磁気券です。発売額は片道130円×2-10円で250円です。
東京急行電鉄は他社とは大きく性質が異なります。
・他社は往復乗車券、このきっぷは130円区間の2枚セット。同じ区間の往復に使用しなくても良い。
・他社は発売当日または2日間有効。このきっぷは4月1日から9月30日までの半年間有効。
・他社は乗越をするとその区間の運賃が別途必要。このきっぷは130円との差額。

「往復乗車券」と銘打っておらず、実質的に130円回数券の2枚セットといったところです。
6ヶ月有効、差額精算可能ということで他社のものよりも使い勝手はかなり良いです。

乗越時は差額精算ですので、例えば250円区間(渋谷〜たまプラーザ間など)をこのきっぷで乗り越し精算すると、精算額は250-130=120円となります。
往復利用すると、総額で250+120+120=490円となります。東急線250円区間はIC利用時247円ですので、往復利用で494円となり、ICよりも安価となります。
すなわちICときっぷの差額が4円以下であれば、この乗車券で乗越精算したほうがIC利用よりも安価ということになります。

その区間とは220円(IC216円)、250円(IC247円)、270円(IC267円)、300円(299円)、330円(329円)、370円(370円)区間です。
「初乗り2枚きっぷ」という名称ではありますが、長距離乗車する場合に利用したほうが得ということになります。



この割引往復乗車券ですが、正直なところ各社販売に力を入れているようには見えません。
実際にいくつかの駅で聞いてみたところ実利用はあまりないようで、ほとんどは記念目的での購入とのことでした。

手書きの補充券で発売しているところが多く、数をさばくには不向きな販売方法です。駅改札口や運賃表でこのきっぷの告知を行なっていないところがほとんどです。

ただし相模鉄道だけはマスコットキャラクター「そうにゃん」のPRを兼ねてか、上り下り・大人小児で図案が異なる全96種類というコレクターズアイテムのような品揃えです。
なお相模鉄道は数が多すぎるため購入していません。


公式サイトで告知しているのを確認できたのは以下とおりです。京王電鉄京成電鉄については見つかりませんでした。見落としているだけかもしれませんが。
相模鉄道「そうにゃんデビュー記念初乗り往復割引乗車券」を発売いたします
西武鉄道4月1日(火)より「おとなりきっぷ」を発売します!
東武鉄道4月1日(火)よりとうきょうスカイツリー駅から浅草駅までの特急料金無料サービス列車を拡大、さらに通年実施します!
      ※新たに「浅草・東京スカイツリー®観光記念往復きっぷ」を発売します の記載あり
      鉄道旅客運賃の認可および改定について
      3特急料金・着席整理料金その他について に往復割引乗車券の記載あり
京浜急行電鉄鉄道旅客運賃の認可および改定について
        ※3.その他 に初乗り区間の往復割引乗車券の記載あり
東京急行電鉄東急線 運賃改訂のご案内[東急線 改定後の運賃・料金]
        ※下部に初乗り2枚きっぷ 2014年4月1日〜 の記載あり