旅客営業取扱基準規程第151条の2

三原から三原への片道乗車券です。
経由は「三原・新幹線・呉線」です。

この乗車券の経路は三原(山陽新幹線)広島(山陽本線)海田市(呉線)三原です。
営業キロは164.8kmですので運賃は2940円となるのですが、券面は2520円となっています。

東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則(以下、規)第16条の2第1項第1号において、神戸〜新下関間は山陽本線山陽新幹線を同一扱いすると定めていますが、同第2項第6号では新幹線単独駅を含む区間を発着・接続駅とする場合は異なるものとして扱うと定めています。
一方で海田市〜広島間は東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程(以下、基)第151条で分岐駅通過の特例が定められており、折り返し区間で途中下車しない条件で折り返し区間区間外乗車が認められています。基151条の2において海田市〜広島間の場合に限り新幹線利用時も適用することが定められています。

三原→三原の乗車券は上記分岐駅通過の特例を適用させ、運賃計算上の経路は以下と同じとなります。
三原(山陽本線)海田市(呉線)三原営業キロは152.0kmとなり運賃は2520円となります。


呉→名古屋市内で広島から新幹線を利用する乗車券を過去にご紹介しました。
旅客営業規則上、三原〜広島間は山陽新幹線山陽本線を別の線路として扱うことが定められており乗車経路通りの乗車券も発売できます。
しかしながらマルスシステムでは海田市〜広島間の折り返し特例を適用せず、折り返し区間を運賃計算に含む乗車券を発売できないため、出札補充券で発売されます。


呉から呉への片道乗車券です。経由は「呉線・山陽・広島・新幹線・三原・呉線」とあります。

この乗車券の経路は以下のとおりです。営業キロは164.8kmです。
呉(呉線)海田市(山陽本線)広島(山陽新幹線)三原(呉線)呉

三原→三原と同じような経路で呉線内の駅を発駅とし、山陽新幹線に乗り継ぐ乗車券ですが券面の運賃は2940円です。分岐駅通過の特例が適用された場合の運賃は2520円ですので、この乗車券には特例が適用されていないことになります。同じ呉線・新幹線の一周乗車券でも、発着駅で運賃が異なっています。

これは基151条の2が「矢野以遠(坂方面)の各駅と三原以遠(糸崎方面)の各駅相互間」と定められているからです。
※「○○以遠」の場合、○○駅も含まれます。

(海田市・広島間に係る区間外乗車の取扱いの特例)
第151条の2 矢野以遠(坂方面)の各駅と三原以遠(糸崎方面)の各駅相互間を乗車する旅客が、新幹線に乗車(広島・東広島間を除く。)する場合は、規則第16条の2第2項の規定にかかわらず、三原・広島間を同一の線路とみなして、広島・海田市間において、途中下車をしない限り、別に旅客運賃を収受しないで当該区間について乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。

すなわち、三原→三原(経由:三原・新幹線・呉線)の場合は発駅が三原で三原以遠を満たします。着駅は呉線を経由し三原ですので、矢野以遠(坂方面)も満たします。したがって基151条の2は適用され、分岐駅通過列車の特例を適用した乗車券が発売できます。
一方で呉→呉(経由:呉線・山陽・広島・新幹線・三原・呉線)は発駅が呉で矢野以遠(坂方面)を満たしますが、着駅の呉は三原以遠を満たしません。よって分岐駅通過列車の特例は適用されず、乗車経路通りの乗車券しか発売できないことになります。マルスシステムは分岐駅通過列車の特例が適用できないケースにあっては、乗車経路通りの乗車券の発売に対応していることがわかります。

分岐駅通過列車の特例は折り返し区間で途中下車をしないことが条件ですので、特例適用により海田市〜広島間の途中下車可否も変わってきます。
三原→三原の乗車券では、向洋・天神川・広島の各駅での途中下車はできませんが、呉→呉の乗車券では経路上のすべての駅で途中下車が可能です。

なお、三原→三原を乗車経路通りに運賃計算した乗車券とすれば各駅での途中下車が可能ですが、マルスシステムでは発券できないため出札補充券による発売となります。





三原から海田市への片道乗車券です。

経路は三原(山陽新幹線)広島(山陽本線)海田市です。
発駅は三原以遠を満たしますが着駅の海田市は矢野以遠を満たさないため、乗車経路通りに運賃計算されます。営業キロ77.8km 1280円です。


三原から矢野への片道乗車券です。

経路は三原(山陽新幹線)広島(山陽本線)海田市(呉線)矢野です。
上記乗車券を一駅呉線方面に伸ばしたものですが、発駅は三原以遠、着駅は矢野以遠を満たすため分岐駅通過の特例が適用されます。運賃計算上は三原(山陽本線)海田市(呉線)矢野と同じ経路となり、営業キロ67.6km 1110円です。
遠くまで買った乗車券の方が安くなるという奇妙な現象が発生することになります。

この乗車券で海田市で前途放棄した場合どうなるのでしょうか……。
着駅を超えているわけではないので規249条に定められる区間変更ではありませんし、下車前途無効の乗車券なのでそのまま回収されて終わりとなるとは思いますが。

【旅客営業規則】
(東海道本線(新幹線)、山陽本線(新幹線)、東北本線(新幹線)、高崎線(新幹線)、上越線(新幹線)、信越本線(新幹線)及び鹿児島本線(新幹線)に対する取扱い)
第16条の2 次の各号の左欄に掲げる線区と当該右欄に掲げる線区とは、同一の線路としての取扱いをする。
(1)東海道本線山陽本線中神戸・新下関間/東海道本線(新幹線)及び山陽本線(新幹線)中新神戸新下関
(略)
2 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる区間内の駅(品川、小田原、三島、静岡、名古屋、米原、新大阪、西明石、福山、三原、広島、徳山、福島、仙台、一ノ関、北上、盛岡、熊谷、高崎、越後湯沢、長岡、新潟、博多、久留米、筑後船小屋及び熊本の各駅を除く。)を発駅若しくは着駅又は接続駅とする場合は、線路が異なるものとして旅客の取扱いをする。
(略)
(6)三原・広島間
(以下略)

(区間変更)
第249条 普通乗車券、自由席特急券、特定特急券普通急行券又は自由席特別車両券を所持する旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、あらかじめ係員に申し出て、その承諾を受け、当該乗車券類に表示された着駅、営業キロ又は経路について、次の各号に定める変更(この変更を「区間変更」という。)をすることができる。
(1)着駅又は営業キロを、当該着駅を超えた駅又は当該営業キロを超えた営業キロへの変更
(2)着駅を、当該着駅と異なる方向の駅への変更
(3)経路を、当該経路と異なる経路への変更
(以下略)


【旅客営業取扱基準規程】
(分岐駅通過列車に対する区間外乗車の取扱いの特例)
第151条 次に掲げる区間の左方の駅を通過する急行列車へ同駅から分岐する線区から乗り継ぐ(急行列車から普通列車への乗継ぎを含む。)ため、同区間を乗車する旅客 (定期乗車券を所持する旅客を除く。)に対しては、当該区間内において途中下車をしない限り、別に旅客運賃を収受しないで、当該区間について乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。
(略)
 海田市・広島間

(海田市・広島間に係る区間外乗車の取扱いの特例)
第151条の2 矢野以遠(坂方面)の各駅と三原以遠(糸崎方面)の各駅相互間を乗車する旅客が、新幹線に乗車(広島・東広島間を除く。)する場合は、規則第16条の2第2項の規定にかかわらず、三原・広島間を同一の線路とみなして、広島・海田市間において、途中下車をしない限り、別に旅客運賃を収受しないで当該区間について乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。