鹿島臨海鉄道の乗車券

涸沼(ひぬま)から大洗までの片道乗車券です。
「乗車券」としかありませんが、JR風に言えば駅名式の特別補充券となるのでしょうか。

長者ヶ浜潮騒はまなす公園前鹿島サッカースタジアムといった長い駅名も省略せず印字されています。
発行箇所は「鹿島臨海鉄道大洗乗務員発行」とありますが、鹿島臨海鉄道の車掌は車内補充券発行機(車発機)を携帯しており、この補充券で発売することは無いと思われます。

涸沼駅鉾田市観光協会の出張所があり、係員配置の時間中は鉾田市の名産品(メロン全国一)の他に大洗鹿島線の乗車券の委託販売も行なっています。
自動券売機や硬券などはなく、この乗車券のみの取り扱いです。紙に丸印を付け、日付、金額、人員を記入し発売します。
ご覧のとおり水戸〜鹿島神宮の片道券としてしか発売できません。鹿島サッカースタジアム鹿島神宮間はJRの鹿島線なのですが、運行の形態からも鹿島神宮までの全区間が自社線のようにも見えます。

事由欄の「手」は手回り品と思われます。大洗鹿島線は手回り品の制度があり、料金は1回270円です。
かつては荷物に括りつける荷札式でしたが、現在は車発機やPOS端末でも手回り品切符を発券できます。
「その他」とあるのは何でしょうか?謎です。

この乗車券は涸沼駅の他、鹿島神宮駅前の観光案内所、荒野台駅前の商店でも発売しているようです。


東水戸から水戸への片道乗車券です。鹿島臨海鉄道の車発機で発券されたものです。

JRの車内補充券と比べると幅約80mmと横長の様式です。
大洗鹿島線はほとんどの列車がワンマン運転なのですが、朝夕は一部の列車に車掌が乗務し無人駅から乗車した旅客に乗車券を発売しています。



大洗から涸沼への片道乗車券です。
大洗駅には自動券売機が設置されていますが、出札窓口にPOS端末が設置されており窓口での購入も可能です。

かつてはJRのPOS端末と同じ様式で印字されていたのですが、2011年春頃に現在の様式となりました。巨大な三角印が特徴的です。



大洗から勝田への片道乗車券です。水戸接続のJR線連絡乗車券です。
POS端末ではJR線連絡乗車券も発売できます。

連絡乗車券の場合は、発着駅の会社名が印字されるようになっています。
また、経由欄で接続駅も印字されます。

発売額は鹿島臨海鉄道310円、JR東日本180円で合計490円です。



臨時駅の鹿島サッカースタジアムから鹿島神宮への片道乗車券です。鹿島臨海鉄道の地図式特別補充券での発売です。
発行箇所は「鹿島臨海鉄道大洗乗務員発行」とあります。元々は車内補充券として使用されていたのでしょうか。

鹿島サッカースタジアム駅は通常全列車通過ですが、カシマサッカースタジアムアントラーズの試合がある日などに限り停車します。券売機の無い駅ですので、乗車券の発売にはこのような補充券が用いられます。
白抜きの○と黒塗りの●で連絡範囲を表していますが、地図式の補充券で連絡運輸の範囲外まで記載があるのは珍しい例です。
これは同駅がJR線と鹿島臨海鉄道線の境界駅であり、鹿島神宮方面はJR線単独の乗車券となり連絡範囲と関係なく発売できるため、連絡範囲外であっても掲載されているのではないでしょうか。

とはいえ、常磐線南中里〜いわき、水郡線玉川村常陸大子が掲載されているのは水戸からのJR線単独の乗車券を発売するためとは考えづらく、実際のところは連絡範囲縮小前の図をそのまま流用しているだけなのかもしれません(※)。
※かつては掲載範囲の全駅が連絡範囲でした。15年くらいまえに縮小されました。

JR東日本鹿島臨海鉄道の連絡範囲は以下のとおりです。JR側は接続駅により連絡範囲が異なります。
JR東日本
 水戸接続:東海道本線 東京(※)、常磐線 松戸〜高萩間、水郡線 常陸青柳常陸大宮間・南酒出〜常陸太田間、水戸線
 鹿島サッカースタジアム接続:東海道本線 東京(※)、総武本線 市川〜佐倉間・銚子、成田線鹿島線
鹿島臨海鉄道:各駅
※東京都区内の各駅を含む。


原券欄の「特○企○遊」はJR線のみに有効となる特別企画乗車券、周遊きっぷからの乗越を想定していると思われます。
青春18きっぷで乗り越す旅客もいると思いますが、すでに廃止された周遊きっぷが掲載されているのが興味深いところです。

この補充券ですが、よく見ると連絡範囲であるはずの成田線の一部(成田〜成田空港、我孫子〜成田)が含まれていません。
これは鹿島臨海鉄道では連絡乗車券として発売できないというわけではなく(駅では発売しています)、以下の理由からと思われます。
(1)鹿島臨海鉄道の開業は1985年、成田線 成田〜成田空港間の開業は1991年。開業時に補充券を作成したときは成田空港駅までが未開業であった。
(2)成田線 我孫子〜成田間は鹿島サッカースタジアム接続に限り発売可能であるが、路線を掲載してしまうと水戸経由でも発売・乗車できるように見えてしまう。

有効期間には2日と4日があります。当日限り有効の場合は有効期間への入鋏を省略すると裏面に記載されており、入鋏欄自体がありません。
片道1日か2日、往復は2倍となり2日か4日ですのでこれで十分ではありますが、現在JR側の連絡範囲は水郡線を除きすべて東京近郊区間内の駅です。大洗鹿島線水郡線は、最遠となる鹿島サッカースタジアム常陸大宮間でも101kmを超えておらず(76.4km)、東京近郊区間内の駅を着駅とする場合は距離によらず当日限り有効です。この補充券で2日間有効となる片道乗車券は発売されないのではないでしょうか。
過去にご紹介したような東京山手線内で東北新幹線を経由するような乗車券を社線側で扱っているとも思えず、開業当初は水戸・鹿島サッカースタジアム(当時は北鹿島)が東京近郊区間外であった名残と思われます。