乗継割引運賃の適用順序(2)

先日、ICカード乗車券を使用した際の乗継割引運賃の適用をご利用明細から考察しました。
今回は徐々に割引額が大きくなる乗り継ぎで、おそらく最大となる3度の乗継割引が適用される経路において、どのように運賃が減額されるか見てみました。

今回の経路は以下のとおりです。

新宿(JR東日本・山手線)高田馬場(西武鉄道新宿線)中井(東京都交通局大江戸線)中野坂上(東京メトロ丸ノ内線)新宿

上記区間の、無割引の運賃は以下のとおりです。
新宿〜高田馬場:130円(JR東日本)
高田馬場〜中井:140円(西武鉄道)
中井〜中野坂上:170円(東京都交通局)
中野坂上〜新宿:160円(東京メトロ)

この経路には、以下の3種類の乗継割引が設定されています。便宜上、以下のように呼称します。
新宿〜高田馬場〜中井:10円(割引1)
高田馬場〜中井〜中野坂上:20円(割引2)
中井〜中野坂上〜新宿:70円(割引3)


新宿駅発行の上記経路で乗車した時のSuica残額ご利用明細です。

順に見ていきます。なお2度目以降の入場が全て「*入」となっていることから、それぞれが乗継として扱われていることが分かります。

1.JR東日本 新宿〜高田馬場 1000円→870円
 130円が減額されました。JR線の無割引運賃です。
 (割引1)− (割引2)− (割引3)− 割引総額0円

2.西武鉄道 西武馬場〜西武中井 870円→740円
 無割引運賃140円に対し、130円が減額されました。JR→西武の乗継割引10円(割引1)が適用されました。
 (割引1)○ (割引2)− (割引3)− 割引総額10円

3.東京都交通局 都 中井〜都中野坂 740円→580円
 無割引運賃170円に対し、160円が減額されました。JR→西武の乗継割引10円(割引1)よりも、西武→都営の乗継割引20円(割引2)の方が割引が大きいため、(割引2)のみが適用されます。(割引1)は取り消された格好となります。
 ただし、(割引1)で既に10円が割引かれているため(割引2)との差額の10円のみが都営の運賃170円から割引かれ、160円がICカード乗車券から差し引かれます。
 (割引1)× (割引2)○ (割引3)− 割引総額20円

4.東京メトロ 地中野坂〜地 新宿 580円→480円
 無割引運賃160円に対し、100円が減額されました。西武→都営の乗継割引20円(割引2)よりも都営→メトロの乗継割引70円(割引3)の方が割引が大きいため、(割引3)が適用されます。(割引2)は取り消されます。
 (割引1)と(割引3)は直接繋がっていない割引です。(割引2)が取り消されたことにより、(割引1)が適用できるようになります。このため、(割引1)の10円と(割引3)の70円の合計80円が割引総額として適用されることになります。
 3.までで20円が割り引かれているため、80円との差額である60円がメトロの運賃160円から割り引かれ、結果100円がICカード乗車券から差し引かれます。
 (割引1)○ (割引2)× (割引3)○ 割引総額80円


今回の無割引運賃の総額は130+140+170+160=600円、割引総額80円で520円が最終的にICカード乗車券から減額されました。
このような適用・不適用が入れ替わる複雑な(通常有り得ない)乗継でも、それぞれの乗車終了時を含めて全てのタイミングで正しく割引を含めた運賃計算がされていることが分かります。
連絡乗車券はあらかじめ発駅で購入しておく(ルートを乗車前に確定させる)必要があることから、なかなかこのような柔軟なことは難しいところでしょう。下車時に割引を適用させることができるというのはICカード乗車券のメリットと言えます。