JR線、会社線、地下鉄線の相互間の連絡乗車券には乗継割引運賃が設定されている区間があります。
概ね初乗り区間どうしの連絡乗車券に適用され、割引額はそれぞれ10円(各社5円ずつ)、20円(各社10円ずつ)が多いようです。東京メトロ線と都営地下鉄線の相互の乗り換えには70円という割引が設定されています。
乗継割引運賃の適用条件として、あらかじめ連絡乗車券を購入しておく必要があります。乗越精算(自動精算機含む)では適用されません。PASMO/SuicaといったICカード乗車券でも適用されます。
ところで、A社→B社→C社の順で三社を乗り継ぐ場合で、A社〜B社間・B社〜C社間に乗継割引が設定されている場合にICカード乗車券を使用して乗り継ぐと割引の適用はどうなるのでしょうか。
すべての割引が適用されるのでしょうか？それとも先の割引のみが適用されるのでしょうか？
新宿から南新宿まで、Suicaで東京メトロ線・都営地下鉄線・小田急線を乗り継いだ利用をしてみました。
経路は、新宿(丸ノ内線)新宿三丁目(新宿線)新宿(小田急線)南新宿です。
運賃は以下のとおりです。
東京メトロ線：新宿〜新宿三丁目 160円(0.3km)
都営地下鉄線：新宿三丁目〜新宿 170円(0.8km)
小田急線：新宿〜南新宿 120円(0.8km)
東京メトロ線〜都営地下鉄線間には70円、都営地下鉄線〜小田急線間には20円の乗継割引が適用されます。
乗継割引が適用されると、新宿〜新宿三丁目〜新宿間270円、新宿三丁目〜新宿〜南新宿間270円となります。
中野駅発行のSuica残額ご利用明細です。チャージ額の減額を順に見ていきます。
1.東京メトロ 新宿〜新宿三丁目(1000円→840円)：
160円が差し引かれました。東京メトロ線の無割引の運賃です。
2.東京都交通局 新宿三丁目〜新宿(840円→740円)：
100円が差し引かれました。都営地下鉄線の無割引運賃170円に東京メトロ〜都営地下鉄の乗継割引70円を適用した額が差し引かれます。
種別が「＊入」であることからも、乗り継ぎとして扱われていることが分かります。
3.小田急電鉄 新宿〜南新宿(740円→620円)：
120円が差し引かれました。小田急線の無割引の運賃です。
種別は「入」だけであり、乗り継ぎとしては扱われていません。
この結果を見ると、乗継割引は最初の乗り換えのみに適用され、2回目は適用されていない事がわかります。
それでは同じルートを逆にたどってみます。
経路は、南新宿(小田急線)新宿(新宿線)新宿三丁目(丸ノ内線)新宿です。
1.小田急電鉄 南新宿〜新宿間(1000円→880円)：
120円が差し引かれました。小田急線の無割引の運賃に相当します。
2.東京都交通局 新宿〜新宿三丁目間(880円→730円)：
150円が差し引かれました。都営地下鉄線の運賃に乗継割引を適用した運賃に相当します。
種別は「＊入」で、乗り継ぎとして扱われています。
3.東京メトロ 新宿三丁目〜新宿間(730円→620円)：
110円が差し引かれました。種別が「＊入」なので乗り継ぎとして扱われています。
ただし、都営地下鉄線と東京メトロ線の乗継割引70円を適用する代わりに、小田急線〜都営地下鉄線の乗継割引20円が取り消されます。
正規運賃の160円から差額の50円が割り引きとなり、結果として110円が差し引かれます。
この結果から複数回の乗継割引が関連する乗り継ぎの場合、割引は1度しか適用されませんが、割引額の大きい方が適用されている事がわかります。
先に割引が適用されていた場合は、すでに割り引いた額と今回の割引額の差額分のみが割引として適用されます。
今回は全体として380円が差し引かれましたが、会社間の運賃の分配は正常になされるのでしょうか。
なお、ICカード乗車券利用時に複数の割引が発生する場合は、東日本旅客鉄道株式会社 ICカード乗車券取扱規則第53条に以下のように規定されています。割引額の大きい割引のみが適用されます。
（割引の適用が重複した場合の取扱い
第53条 Suica乗車券の乗車区間について第51条第3号又は前条に規定する割引の適用が重複する場合にあっては、次の各号に定めるとおりとします。
（1）割引額が異なる場合には、旅客運賃が低廉となる割引を適用します。
（2）割引額が同一の場合には、乗車区間において最初に発生する割引を適用します。
新宿を接続駅とした小田急電鉄と東京都交通局の乗継割引の適用範囲は以下のとおりです。各社局10円ずつ、合計20円が割り引かれます。
小田急電鉄：小田原線 南新宿〜代々木上原間
東京都交通局：大江戸線 都庁前・西新宿五丁目、新宿線 新宿三丁目・曙橋
