成田スカイアクセス線経由の連絡乗車券

都心と成田空港を最短36分で結ぶ京成電鉄成田スカイアクセス線が2010年7月に開業しました。36分は日暮里〜空港第2ビル間ですが、それでもずいぶん速くなったものです。
開業に合わせ京成線→JR線へのスカイアクセス線経由の連絡運輸も開始されましたが、JR線→京成線の連絡運輸はスカイアクセス線経由が設定されず、引き続き京成本線経由に限られるという状態が続いていました。

このたび、JR線からのスカイアクセス線経由の連絡運輸が開始されたと知り、早速連絡乗車券を購入してきました。
規定上は2011年3月12日のダイヤ改正に合わせてJR線からの連絡運輸が開始されたようですが、東日本大震災の翌日です。当時はとてもそれどころではなかったでしょう。

立川発、成田空港行片道乗車券です。着駅の印字は「スカイアクセス成田空港」とあります。
首都圏の会社線連絡乗車券としては珍しく、マルスシステムに運賃が登録されており自動改札機に対応した85mm券での発券が可能です。

成田スカイアクセス線の経由印字は本来「成田スカイ」ですが、省略され「成田スカ」となっています。

経路は以下のとおりです。
立川(中央本線)神田(東京折返・東北新幹線)上野(東北本線)日暮里(成田スカイアクセス線)成田空港

JR線は立川〜日暮里 40.7km、運賃は690円、京成線は日暮里〜成田空港 62.0km、運賃は1200円です。
合計で102.7km、1890円となります。100キロを超えており、東北新幹線を経由するため大都市近郊区間内相互発着の乗車券ではありません。このため有効期間は2日間となり全区間で途中下車が可能となります(※)。
※厳密に言うと、連絡乗車券の場合はJRと連絡会社それぞれで営業キロを1キロ単位に切り上げて合算します(東日本旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則第6条)。今回の場合はJR線41km、京成線62kmで合計103kmとなり、途中下車可であるという解釈です。

旅客連絡運輸規則
(キロ程のは数計算方)
第6条 キロ程を計算する場合、関係運輸機関のキロ程(旅客会社のキロ程は通算したキロ程。以下同じ。)に1キロメートル未満のは数があるときは、旅客会社と各連絡会社ごとに、これを1キロメートルごとに切り上げる。


この乗車券は、制度上もマルスシステム上も少々複雑です。JR部分と京成線部分に分けてみてみます。

まずJR線部分です。

立川〜成田空港と全体で見ると、下記東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第70条(図は省略)に定める、通称70条太線区間(電車大環状線とも)通過の特例により最短経路が適用されるように見えますが、この乗車券のJR部分は立川〜日暮里間です。

第70条 第67条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間を通過する場合の普通旅客運賃・料金は太線区間内の最も短い営業キロによつて計算する。この場合、太線内は、経路の指定を行わない。

この規則は、70条太線区間を通過する場合は強制的に最短距離で計算するというものです。「〜〜できる」という表現ではなく、「〜〜計算する」とあることから、選択の余地はありません。
今回は新宿から入り、日暮里でJR線としては終了しています。「通過」はしていませんので上記70条は適用されません。
なお新宿〜日暮里間の最短経路は山手線外回り電車(山手線2・東北線)です。

さて、過去にもご紹介したとおり70条太線区間を発着駅とする場合は以下の東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則第160条が適用されます。

(特定区間発着の場合のう回乗車)

第160条 第70条第1項に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券又は普通回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、う回して乗車することができる。ただし、別に定める場合を除き、う回乗車区間内では、途中下車をすることはできない。

2 前項の規定にかかわらず、第70条に掲げる図の太線区間内の駅相互発着となる乗車券を所持する旅客は、東海道本線(新幹線)東京・品川間及び東北本線(新幹線)東京・上野間をう回して乗車することはできない。

3 第70条に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券を所持する旅客が、第1項の規定によりう回乗車した場合において、そのう回中の途中駅に下車したときは、区間変更として取り扱う。

第1項に「その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、う回して乗車することができる。」とあります。これは通常、最短経路の乗車券で遠回りできることを意味しますが、最短経路以外の発売を禁止するものではありません。このため70条太線区間内で完結するのであれば、実際に乗車する通りの経路による発売も可能です。

ただし、マルスシステムは上記第160条は最短経路を優先するようで、最短経路以外を指定するときは「補正禁止」で経路を入力する必要があります。補正禁止を指定しないとマルスシステムは「要求区間誤り」と再考(エラー)を回答します。


続いて京成線部分です。

着駅を成田空港とすると、JR線の成田空港駅が指定されます。成田スカイアクセス線成田空港駅を指定するには「成田空港(成田スカイアクセス)」を指定します。

JR線と京成線の接続駅は日暮里駅なのですが、日暮里から先を「京成線」で指定すると、以下のようになります。
「日暮里→京成線→京成高砂北総線
ここまで入力した時点で、次の駅名は武蔵野線接続の「東松戸」と新京成線接続の「新鎌ヶ谷」しか出ず、成田スカイアクセス線接続の「印旛日本医大」が候補に現れないためこれ以上経路を伸ばすことができません。これ以上入力できないと北総線まで指定しマルスシステムに送信しても「接続コード指定誤り」と再考(エラー)が回答され、発券できません。
成田スカイアクセス線経由を指定するには、日暮里の次の路線名を「成田スカイアクセス線」のみを指定します。

なお、成田スカイアクセス線を経由した場合の着駅は以下の三駅に限られます。
成田湯川・空港第2ビル(印字はスカイアクセス空港第2ビル)・成田空港(印字はスカイアクセス成田空港)


この乗車券は実際に使用してみたのですが、日暮里駅での乗り換えの際に有人改札で乗り換えてしまったため、日暮里駅乗り換えが記録されず、以後すべての駅で自動改札機が通過できなくなってしまい、残念ながら結果として途中下車はできませんでした。