川崎から京急川崎への鉄社割で発売された乗車券

川崎発、京急川崎行きの片道乗車券です。JR線と京急線八丁畷駅で乗り継いでいます。

川崎駅と京急川崎駅は駅前の道路を挟んで近接しており、徒歩移動が最も常識的な移動手段でしょう。
わざわざ乗車券を購入してまで使うルートではありません。しかしながら制度上は連絡範囲となっており、乗車券の発売は可能です。

なお発駅の川崎駅では八丁畷駅接続の京急線は自動券売機上の路線図に掲載されておらず自動券売機での発売も行なっていません。
JR線で八丁畷へ向かい京急線に乗り換えるよりも、京急川崎駅へ徒歩で移動し全区間京急線を利用する方が所要時間・運賃とも合理的でありむしろ発売することによる弊害を防ぐためと思われます。

このように発駅の自動券売機でさえ発売していないので、購入は必然的に窓口のみとなります。

乗車区間営業キロ、運賃は以下のとおりです。
JR東日本:川崎〜八丁畷 2.8km 130円
京浜急行電鉄八丁畷京急川崎 1.3km 130円

上記合計で260円となりますが、八丁畷を接続駅とするJR線と京急線のうち両者の初乗り区間(3km、130円)同士の連絡にはそれぞれ10円の乗継割引が適用され、発売額は240円となります。京急線→JR線でもJR線→京急線でも適用されます。
割引が適用される連絡乗車券は、後から乗る鉄道会社のみ割り引かれることが多いですが、先に乗る方も両方割り引かれるケースは珍しいのではないでしょうか。

券面右下に[鉄社割]の印字があります。旅客「鉄」道会社線(JR線)と会「社」線(京急線)の両方の運賃が「割」引されていることを意味しています。この割引に関する印字ですが、[割引]と印字されたりそもそも割引に関する印字がなかったりと、規則上どういう扱いとなっているのかはよくわかりません。



この乗車券は連絡運輸に加え、JR線と京急線両方が割り引かれる結構厄介なものです。
こういう乗車券が欲しいのですが、と区間を書いたメモを恐る恐る窓口に渡したところ、今日の利用で良いですか?と確認後即座に発券されました。手書きで経由欄に「八丁畷」と記入し240円です、とこれで終了です。

あまりの手際の良さにあっけにとられてしまいましたが、これはマルス端末の「ワンタッチ機能」というものを使用しての発券です。
ワンタッチ機能とはよく使用する区間の乗車券や特急券等を予めそれぞれのマルス端末に登録しておくことで、入力の一部を省略させることができる機能です。

発着駅の訂正を行なっていなかったため、おそらく川崎→京急川崎(八丁畷接続)で登録されているものと思われます。
仮にこれ以外の区間を発売するときも、割引適用範囲内であればJR線・京急線とも120円ずつであるため運賃の訂正は不要で、発着駅のみの修正で発売可能となります。
しかしこのような区間が登録されているのは何故でしょうか。意外と趣味目的の需要でもあるのでしょうか。

ところで今回はワンタッチ機能により簡単に発売頂けましたが、もしワンタッチ登録がなければ、以下のような手順となり大変な手間がかかります。
1.旅客連絡運輸取扱基準規程別表(連規別表)を参照の上八丁畷接続の川崎〜京急川崎が発売範囲であることを確認
2.JR線・京急線とも10円が割り引かれる乗継割引適用範囲であることを確認
3.マルス端末に以下のように入力する。
 乗車券メニューの金額入力-収受額を選択、
 発駅[川崎]、着駅[京急川崎]、有効日数[1]日、自他区分[自社完結]、
 JR[120]円、
 接続コード 自・社1[4668]→[  ]、自・社1[120]円、
 接続コード   社2[  ]→[  ]、社2[  ]円

特に2.の両方に割引運賃が適用されることを見落としJR130円(無割引)、京急線120円(割引有)の250円で誤発売していまう可能性が高そうです。


今までご紹介した連絡乗車券は「自・社区間入力操作」というものを用いていましたが、今回は「収受額入力操作」というものを用いています。
自・社区間入力操作はJR線区間を自動で計算し、会社線区間は手入力です。会社線のみの乗継割引が適用される乗車券の場合、会社線運賃を割引後とすれば済みますが、今回はJR線・会社線とも割引が発生するので運賃はJR線も運賃を手入力する必要があります。そのための操作が収受額入力操作です。
なお経由が印字されていないこと、上記入力例で経路を指定していないことからも分かる通り、この乗車券には経路情報が記録されていません。そのため経由欄は空欄となり全て手書きとする必要があります。
八丁畷」と接続駅のみ手書きされていますが厳密には「南武・八丁畷」とJR線内の経路も記載する必要があると思われます。
収受額入力操作を行うと、発券後にマルス端末画面上に「手書事項 経由線名は記入してください 接続駅1 八丁畷」と経由線名と接続駅を記入するよう促されますが一見すると接続駅の手書きしか指示していないように見えます。書き漏れてしまうのも仕方ないかもしれません。


なお八丁畷を接続駅とするJR東日本から京浜急行電鉄への連絡範囲は以下のとおりです。
JR東日本東海道本線(※)、南武線武蔵野線横浜線横須賀線、相模線、伊東線中央本線 吉祥寺〜甲府間、青梅線五日市線東北本線 川口〜宇都宮間・戸田公園〜北与野間、常磐線 松戸〜水戸間、川越線高崎線両毛線水戸線総武本線京葉線外房線内房線成田線
京浜急行電鉄:各駅
※東京都区内、横浜市内の各駅を含む。


上記のうち、乗継割引が適用される範囲は以下のとおりです。前述のとおり、それぞれの運賃に10円、合計20円の乗継割引が適用されます。
JR東日本南武線 川崎〜矢向間・川崎新町・浜川崎
京浜急行電鉄京急本線 六郷土手〜花月園前間、大師線 港町